第122.9話「憎いのは異教ではなく異宗派3…4」
「そう、構造と素材はこれで……」
みなさんこんにちは、今日も天気だけど人権が戻ってこない。マイルズです。
ティリスさんが部下に人権破壊兵器(幼児リード大人版)を注文しています。
さらっと見ましたがリードの原型はなく、もう完全にそちらの趣味の人の衣装でした。
魔王候補がこんなのでいいのでしょか……。
「マイルズ殿、指導者に必要なのはどのような人格かではなく、何をなしたか、つまり結果なのです」
鋭いのです。たまに思うのですが、この世界の住人は心を読む能力者がいるようなのです。
「マイルズ殿、経験と場の空気で理解しているだけです。あなたも100年ぐらい生きれば身につきますよ」
ミリ姉は11歳ですがすでにその片鱗が……。
「特殊な人達……英雄様方に囲まれては……、その影響を受けるというモノです」
……本音が出ましたね?
「魔王陛下も特殊……、特別な英雄なので、私も影響を受けました」
おお、さらっと魔王様を変態扱いしましたね。
「ちなみにこれは魔王妃様へのお土産です。ヴァン様には使いません」
そう言いつつその手に持つ手錠は何でしょうか……うん、みなかったことにします。
「で、マイルズ殿はその薄汚い板で何をして遊んでいるのですか? 薄汚い板で」
「失礼な! これは千年前の異世界人が残した異物よ。薄汚くなどない。故郷から強引に流され、行き着いた先で見舞われた苦難に対処しようと懸命に考えた者どもが作り出した物。ロマンではないか!」
「そうなのです! 確かに薄汚くバカぽい造形ですが、何か意味があるのです! 何もないかもしれない! けど! 何かあるかもしれない! そこにロマンがあるのです!」
「そうだ! そうだ! 発想の転換はいつも何気ないところから、違いを求めて発生するんだ! そしてそこから銭が生まれるんだ! 薄汚くて一見何の価値もないカモのしれないが、そこに……」
「「「ロマン(銭)はあるんです!」」」
竜人学者、私、勝さん1号の順にお送りしました。
「では次は昨日、案山子殿657号が発掘してきたこの人形だ!」
「呪いの品ですかね?」
「いやみろこの嫌に細かな造形を、きっとその手のマニアが作った芸術品だ。きっとどこかに売れる要素があるはずだ! それをみつけられれば!!」
「まて! 見よこの背中の紐!」
「内部を振ってみて!」
からんからん
「おお! からくりじゃ無いか! 貸してくれ、治してみせるぞ!」
「勝さん1号、壊してはいけませんよじっくりと……あ、表面に魔法陣のコーティングが!」
「任せろ! 回避する」
「勝さん1号殿、中々よ。復元の専門家がおると捗るのう~」
・・・
・・
・
ふう。久しぶりに楽しかったのです。
衛君改造手術の要領で、表皮に定着している魔法機関を壊さぬように切り、内部を開くと、見たこともない部品がバラバラと出てきました。部品一つ一つにこの世界の魔法と異世界魔法を組み込んでおり、永久機関ではありませんでしたが、道具が風化するまでは機能するように組まれていました。
おかげで素材自体はすぐ特定できたので復元にそんなに時間がかかりませんでした。そう4日程度でした。
「……見事だ……」
「褒めたってなんも出ないぜ」
「勝さん一号、飴ちゃん上げるのです」
切り開いた時に組織を再現するための魔法を込めていたのですが、それを繋ぎ合わせるのは至難の業っです。ですが、この勝さん一号という守銭奴は切り開く前の状態と全く変わらない。いや、より良い状態に戻しています。
衛君や私など生物は体の魔法器官により詳細の状態情報を保存しているので、回復魔法など本来超高度な魔法を比較的術者の意識の低いレベルづけられます。が、物体はその機能がないので非常に困難なのです。
「さぁ、竜人学者殿。最初の起動。その栄誉を譲ろう。なにしろ貴殿の所有物故な」
「ほほう。良いのですかな?」
「いいさ。俺と本体は構造解析で十分新情報を得ている。これ以上は望みすぎだ」
「そうなのです。お肉さん。早く起動するのです」
「幼児よ、そろそろトラウマになるので勘弁してほしい……」
などといいながらも、竜人学者さんはその巨体をうっきうきに揺らしながら人形の線をもつ。
この線、引くなどの物理動作ではなく、魔法力を流し込むことで発動するのです。
どう動くか知ってはいますが、本当に動くのかドキドキなのです。
ブーン
竜人学者(肉)が魔法力を流し込むと人形の眼が青く光ります。
人形はしばらくすると自分の衣装、袴の様なものを手で払い、正座しました。
高度な動作なのです!
「では、1つ!」
人形が喋りました!
「「「おお!」」」
体を寄せ合う私たち。
「久しぶりに発掘されて一つ忘れものを思い出しました……」
そう言って人形は正座している足を見ます。
「はっ、くつ!」
……。
ぐはっ!
うまい!
「「「はははははははは!」」」
ツボに入る私たち。え? ほかの人たち? 知らないのです。
「お粗末様です」
「「「ぶらぼー!」」」
なんとなく御捻りを投げてみます。
「また次回およびください」
人形はおじぎをし、再び『ブーン』と終了音を鳴らして止まります。
正直AI部分は未知です。
制御部品の魔石はブラックボックス化しており、開こうとすると消滅するトラップが仕掛けてありました。なので、今回は完成が目標でしたので、そのまま利用した限りです。
「無駄技術」
「技術者の暴走」
「何が面白いの?」
「異世界人侮りがたし……」
「……」
はい、マモルン、香澄ちゃん、ミリ姉、領主様、騎士団長の順番です。
マモルンと香澄ちゃんは若い女の子なのでしょうがないです。もっと人生経験を踏むのです。
ミリ姉。本気で不思議がるのやめて差し上げてくださいませ。おじさん3人組が切なくなります。
領主様。いい御歳ですもんね。貴方もこっち側の人間ですよね。安心しました。
騎士団長、無言で『幾ら?』って紙に書いて掲げるのやめませんか? よほどツボだったのでしょうか? まだお若く見えますが……ほう、数百年生きてらっしゃるのですか? こういったものに目がない? ……ギャップですな……。
「では、マスター。お休みのお時間です」
竜人学者と筆談で交渉中の騎士団長と、横から虎視眈々と狙っている領主様をおいて、私は権三郎に抱えられて個室へと向かいました。
「あ、今晩ちょっとイベントがありますが、とりあえず権三郎は静観していてくださいね」
「はい、しかし少しでもマスターに傷を付けた地点で……この一帯を地図から消します……」
う……まぁ、たぶん大丈夫でしょう……。
そうして私はウトウトと眠りに落ちていくのでした。
――ダンジョン攻略日記3日目
マイルズと勝叔父さんの迷惑コンビが、遺跡から発掘された遺物の復元作業に嵌りこんで2日目。
俺たちは平和なダンジョン攻略に勤しんでいた。
平和なダンジョン攻略って何よ? って思ったでしょ? え? 思ってない? ……。くっ、マイルズに調教されたのか……かわいそうに。
とにかく俺達はダンジョン攻略を楽しんでいた。
この前後左右上下どの方向にも入り組んだ鍾乳洞型のダンジョンを。
俺は変身なしのハンデを課して進む。
「あー、マモルンが止まるから私の顔がマモルンの御尻に~」
……もう突っ込まない。香澄とは友人としてやり直す方向で決着をつけ、現在女友達という立ち位置のはずなのだが……正直、今(女)の方が貞操の危機を感じる。
「……マモルンお姉さま、私が先頭で参りましょうか?」
この中で一番レベルの低い女の子、ミリアムちゃんが下から気遣いの言葉をかけてくる。
……やめて、香澄。その目を11歳の女の子に向けちゃだめだ。
「大丈夫。この中で最も頑丈な俺が先頭を行く。これが最善策だ」
「キャー、マモルン。可愛い♪」
……カッコいいじゃない? だよね?
「香澄お姉さま、どや顔が可愛いかったですね」
「でしょ~」
……女ってやつは……。
「はぁ!」
道中俺は勝叔父さんからもらった太刀を振るう。
出てくるのは蝙蝠系モンスターやゴブリン、たまに岩に擬態したモンスターたちだ。
先行する俺は壁に刃を当ては太刀を折らないように慎重に振るう。
無論複数の相手をする際にはミリアムちゃんも小太刀片手に参戦する。香澄はそれとなく魔法支援をしてくれる。
会話はアレだが、中々のパーティーである。
「さて、そろそろ時間かな?」
「えー、ボス部屋目の前ですよ?」
そう、俺たちの目の前には豪華な扉がある。
「俺たちは今回ダンジョンで憂さ晴らし……じゃない、楽しみに来たんだ。早く攻略してしまっては楽しめないじゃないか……」
そういって俺は後ろを見る。
カーン、カーン。
つるはしを片手に案山子たちが採掘をしている。そして俺達に気付いたらしく敬礼をする。その頭には日本語で『安全第一』と掛かれた黄色いヘルメットをかぶっている。
……帰り道は直線ルートで確保されている……。薄暗かったダンジョンも灯が設置されて不安がない。
「……あと、先に進むとダンジョンマスターが気の毒……」
「ですね……」
「放置して害を与えていたのだから、自業自得ともいうけどね」
切なくなる俺とミアムちゃん。
ダンジョンマスターのことなどどうでもいいとばかりの香澄。
俺達が領主様の館に戻ると、奇妙の音を立てて分析に熱中している3人が居た。
目が怪しい。
その光景に不安になりつつも、マイルズが出歩かないことを思えば安心かな? と割り切れない思いを抱いていた。
しかし、完成と同時に問題は発生する。
ダンジョン攻略でリフレッシュした俺達は、また面倒なことに巻き込まれるのだった。
変態王子の南方諸国記録ーーーーーーーーーーーーーーーーー
情報を統合していとし子への報告の時間が来た。
事前に渡されていた通信魔道具を机の真ん中に設置し、魔法力を込めると起動する。
すると一本の青い光が魔道具から放たれている。これは通信がうまくいっている証である。
「いとし子よ、聞こえるか?」
「……マイルズ様は別な場所から接続されます。しばしお待ちください」
別な場所? まて、という事はいとし子の護衛は誰が?
私が一瞬混乱していると2本目の青い光の線が魔法道具から放たれる。
「あー、遅れたのです! マイルズなう! そして拉致再びなのです!」
……はぁ?
……全く、いとし子はいつも面白い。
カクヨム+α
「して、いとし子よ。拉致されているというが不便はないか?」
「はい。臭いので掃除させています! 通気性も悪かったので思い切って大穴開けてみました! 今はお部屋(牢獄)のリフォーム中なのです! 変態王子の経験がここで生きるのです! そしてなんと! ここには温泉があるのです! うなります!」
ふっ、いつも通りではないか。
「では、始めましょう~。暗躍しているつもりの皆さんをひっくり返す会議を……」
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