第120.7話「死の国へ3」

☆ ☆ ☆

「ラシア。君はこの状況如何に思う?」

 僕の名はラシア。目の前にいらっしゃるのは少年王アンリ。

 ……と呼ばれた我が国の英雄王……だった方。

 ……いえ、すぐに英雄王に戻れる。我ら臣下一同そう信じています。


「僕の意見など畏れ多くも……」

「聞きたいから問うている。自分をそう卑下する者ではない」

 王は慈悲深い。

 このような片腕の僕に……。学のない僕にも気を使ってくれる。

 そう僕はかつてハンターと呼ばれる存在だった。


 国情が思わしくないと言われ始めたとき、僕が所属していたパーティーは魔王国に活動拠点を移した。

 人間差別が残る魔王国に渡るのは忌避感があった。

 だが、その当時は最良の選択だったのだろう。

 だが、僕は残った。

 少年王陛下には恩があった。

 妹を貴族の魔の手から救ってもらったという恩が。

 少年王陛下にとっては数多ある貴族との抗争、そのほんの1つだったかもしれない……。

 でも僕は忘れはしない。

 あの絶望に染まった我が家を、希望の色に塗り替えてくれたこのお方を。あのご恩を。

 だから僕は、彼の治世が乱れようとしているのであれば、家族を魔王国へ送り出し、自分は一兵卒として、少年王陛下のお味方せねばと思った。

 そして僕は、王を守るため身を盾にし、左腕、そのひじから先を呪いによって失った。


「して如何に思う?」

 少年王の目が本気である。


「逃すには大きすぎると思います」

「ほう……」

 少年王の目が鋭く、そして王にふさわしい雰囲気をまとう。

 思わず息をのむ僕に気づいた少年王陛下は、苦笑いを浮かべ、そしていつもの気さくな笑顔に表情を変える。


「彼の灰色の御仁は噂に聞くアルキアの案山子、それを2体、しかも自我を……」

 個の魔王国特殊部隊一行について語る僕。真剣に聞く少年王陛下。言葉を紡ぎながら僕は、少年陛下のその瞳はやはり覇者の瞳だと思うのだった。

 御恩と奉公。

 御恩は返せないほどいただき、更に今覇者に仕えるというやりがいまでいただいている。

 奉公は……勿論、この方を王へと返り咲かせること……。

 僕は冒険者上がりの兵士。王を守るため、身を投げる程度の事しかできない取るに足らに存在。だが、もう1つ。僕でも役に立つことがある。それを、せめてそれをこの僕の英雄の為に……。


カクヨム+α

「密談! そしてこっそりのぞく私!」

「マイルズ、何で女中さんの服を着ているの?」

「……様式美ですミリ姉」

 その後なぜだか抱っこの上拉致され、勝さん1号とマモルンから憐みのまなざしを受けました。

 おかしいのです!

 え? 祖父と祖母にこの絵を送りたい?

 ノーです!

 断じてノーです!

 ……ちょ、勝さん1号なんで価格交渉してるんですか!

 ……え? 何? 獣王国と違う様式美で需要有? ですと?

 待つのです。魂を分け合った兄弟よ。

 ……結局、その筋の方々の大変喜ばれたそうです。

 勝さん1号がそろばんをはじく音が楽しそうでした……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る