外伝『その時の……おっさん幼児!』  第3回「甲冑女子は可憐に!」

※完全に蛇足です。3章当時のマイルズが獣王国でちやほやされるお話です。

-------------------------------------


 みんな~、頑張るのです~。

 私はポチに侮辱された浮き輪に流されつつ浮遊感を楽しんでいます。

 あ、権三郎今の波そんなに抑えなくても大丈夫ですよ~。

 過保護な権三郎は、私が波で転覆しないように目を凝らしています。


 「1分経過!」


 私は優雅に、そしてポチ達は必死に立ち泳ぎ中です。

 身体(能力)測定の為、甲冑を身の纏った女子たちが温水プールで立ち泳ぎしております。

 そうこれが水泳なのです。

 彼女ら獣王国の民。獣王国は西を海に面した海運の盛んな国です。海運は物流で最高の効率なのです。

 ……そんな国に住めば、貴族にお生まれれば海賊退治に出陣もするし、一般市民も移動に船も使います。そんな時、もし万が一海に投げ出された際。生き残るために必要な技術。その能力測定がこの項目なのです。


 なお、皆さま足のつかない深さのプールですので、生徒1人に足の着く身長の先輩が1人ついて安全対策ばっちりです。


 「ポチ」

 「何じゃマイルズ」

 「うば~~~! なのです」


 ふよふよとポチに近付いた私は渾身の変顔を披露します。

 ……笑いをこらえバランスを崩すポチ。あ、少し水を飲みました。


 「マイルズ、外道です」

 「タマ、試練なのです。突破できればもう一段階先に逝けるのです。という事でタマにも、ちょっと1試練♪なので~す」


 すいーっと近付く私。タマと目が合う。……ちょっとタマ。もう笑いそうなのはどういうことですか?失礼ではないですか?

 

 「そこまでだ。いとし子よ」


 小さな波紋だけ立てて変態王子が水面に立つ。人外なのです……。

 恰好はおおよそプールに似つかわしくない執事服です。……あ、ちゃんと靴と靴下脱いでる。


 「これから……10時のおやつの時間だ!」


 なんとそんな重要行事の時間でしたか!!


 「というわけで、プールサイドに用意済みである! はーい、ふきふきするぞー……よーし、両手上げて……

ばんざーい、だ」


 ばんざーい、なのです。あ、このタオル生地柔らかいのです。すっごくいいのです。


 「はい、みなさん。検査中ですよー。ひな鳥を見守る視線はそこまです。」


 ……教官が何か言いました?……

 して、本日の#すいーつ__・__#は何でしょう。


 「グラグ餅だ」


 ……くず餅でした!

 ひゃっはぁぁぁぁっぁ!


 上品な蜜の甘さにトロトロなのです。


 「……あの美しい方が……【良いところなし】で有名なグラグであんな美味しそうな物を作られたでしょうか……尊い……」

 「わが領地で大量に取れます……。お声がけしようかしら……キャッ……」


 ……イケメン(変態王子)死すべし。

 しかし、異世界人保護がシステムが整い、異世界文化の応用が花開いている神王国。そこの料理に精通しているのです、手放すのは惜しいですね……。しかし、ぐぬぬぬ。


 「うむ。いとし子よ、口についておるぞ……」


 どこからか黄色い歓声が響いてきます。

 ……それ、イケメンの優しい挙動にですよね?

 変な掛け算してませんよね?ね?ねぇ?ねぇ?ねぇ??みんな! 目を合わせて!!!!


(4話はあるのか! つづけ!!)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る