第120.5話「死の国へ2」
長らくお待たせしました!
カクヨムコン3は残念でした。中間にも残れませんでした。
うん。ネタで版権方面いじりまくったので、応募規約に引っかかったのか!?
え?実力?……しってるもん!……では本編どうぞ!
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権三郎とヴァンリアンスさんが向かい合っています。
距離にして20mほど離れているでしょうか。
仄かな緊張感に包まれつつある野営テント前より、マイルズがお送りしております。
ん?放送中?な訳ないじゃ無いですか……。
権三郎はともかくヴァンリアンスさんの能力は国家機密です。
戦力誇示のため一部情報は出ていますが、どのような効果で、根本の力は何を使っているのか、それは国家機密なのです。映像流出で解析などされてしまっては国際問題なのです。
今もテント周辺では魔王軍エリート部隊が、全力を持って結界を張り巡らせ情報を守っています。
「さて、実力をお見せするには、どの様な力をお見せすれば良いでしょかね……」
ヴァンリアンスさんが顎に手を当て、とぼけた事を言う。
暗に『どの様な条件でも良い』と言っているのです。よほど自信があるのでしょう。しかし……。
「では、私はここから貴方まで歩いて行きます。可能であれば止めてみてください。封印術師……殿」
権三郎は挑発に答える様に『封印術』を強調して返します。
ヴァンリアンスさんが封印術師なのは公然の秘密。
そしてその能力は神王すら警戒する。
それを知ったうえで、あえて『取るに足らない』と権三郎は返しています。
「わかりました。では始めましょう」
「よろしいのですか?準備時間なら1時間ならお待ちしますよ。マスターのおやすみ時間までその程度の余裕はありますので」
笑顔で睨み合う二人。
遠くで厄介ごとを片付けるのは良いが、【私にリスクを近ずけた】この一点に権三郎は強い怒りをたぎらせていた。
一方、己が正義と信念、そしてここまで上り詰めた能力に自信を持っているヴァンリアンスさんも【自身の能力を信じてくれている関係者ごと侮られた】と権三郎とは似たものなのでしょう、同じように静かに怒りを漂わせています。
「結構。マイルズ様、合図をいただきたいがよろしいでしょうか?」
「はーい、ちょっとこのジルリの一夜干しの味覚レポートしてからでいいですか? 美味しいのですよ! まさかの大陸中央部でこれほどのお魚に出会えるとは! 要チェックですね!」
「本体よ。この肝和えもいけるぞ!調理法も調べねば!」
ん? まーちゃんの食卓。なう! なのです。……ほう、勝さん1号、このチーズ、非常にお肉に合いそうな気がします!
「……」
「……」
真面目な二人は黙ってにらみ合っています。しょうがないですね。
「では5秒後に開始です! 5・4・3・・・・ん? 香澄ちゃん。その手に持っているのは豆腐じゃ無いですか? しかも湯豆腐! 真夏ですが、美味しそう。え? 分けていただけるのですか! 流石、衛君のお嫁さん。できる子なのです。……はい、照れてないで……これだから新婚さんは……。……ん? 何でもないのです。香澄ちゃん、その湯豆腐という名前の幸せを幼児にも分けてほしいのです。うん。ありがとうございます。あー・・・・・ん? あ! わっ忘れてたわけでは無いのです! と言うことで再開! 3・2・1……開始で~~~す!」
湯豆腐。醤油持ってきてよかった!
ほうほう。大豆の産地が近くて枝豆もある?
昔転移してきた日本人が作って名物にした?
ほっほう、案山子派遣したくなってきました。
などと私たちが食卓で盛り上がっている横で、権三郎とヴァンリアンスさんの2人が意地とプライドをかけて戦いを始めました。
ティリスさんが我々の食卓に紛れて盛り上がっている様に見えて、しっかりとヴァンリアンスさんを見つめています。心配そうに。所謂乙女と言うやつですね。
この勝負勝敗についてはヴァンリアンスさんへ向かって歩く権三郎を、止められればヴァンリアンスさんの勝利。ヴァンリアンスさんまでたどり着けば権三郎の勝利。そんなルールっぽいのです。
早速、権三郎が一歩踏み出す。するとヴァンリアンスさんの額が光り、特殊な文様を浮びました。そして文様から放たれた無数の光の触手が、権三郎を捉えようと絡みつきます。……ですが、それらは余裕の表情をうかべる権三郎に、まるで【何事もなかったかの様に】振り切られます。
驚愕の表情を浮かべるヴァンリアンスさん。
ヴァンリアンスさんが怯んでいる間も、権三郎はゆっくりとヴァンリアンスさんに近付いて行く。
ヴァンリアンスさんは直ぐに次の術を実施する。
権三郎に向かって手をかざすと権三郎の周囲に光の牢獄が産まれる。
しかし、それも権左部郎の踏み出された足を止めることは叶わず、ガラスが割れる様な音を立てて崩れ去る。
半分の距離を詰められて焦ったヴァンリアンスさんは腰から短剣を抜きはなち……。
「それはダメ……」
しかし、そこでこちらに溶け込んでいるふりをしていたティリスさんが、ふりをやめての制止にはいりました。
その様子に余裕の表情を浮かべて迫り来る権三郎。それを前にしたヴァンリアンスさんですが、何やら覚悟を決めた男の顔をしています。
ここにいるのは各国の重要人物候補、または重要人物とつながる人間なのです。
私は獣王家の婿、勝さん一号や香澄ちゃん、マモルンは王国の国王に繋がる人たち、ドラゴンステーキさん……えっと、うん。名前忘れたのです。彼とミリ姉は……、結界の外にいます。
つまり今ここにいるのは私の護衛として戦力を有している人物。
魔王国と隣接している現友好国の王国と、過去血みどろの戦争を経験した元敵国獣王国。両国の重要人物が、【次期魔王候補にして魔王国の国防の要に近い能力を有するヴァンリアンスさん】、彼の真価を知ることは、牽制になる以上に魔王国のリスクを増大させることに繋がります。
それまでお食事に夢中だった我々は、ティリスさんの発言に手を止め、口を閉じました。これは魔王国の判断。それにわれら従おう。そういう事なのです。
ヴァンリアンスさんは必死な表情のティリスさんを一瞥すると、口元に笑みを浮かべ、そして流れるように左手の平に短剣を当て、軽く引く。
「……馬鹿」
ヴァンリアンスさんの手の平から滴り落ちる血。それが大地に落ちる前に。重力に反発してまるで意思を持ったようにヴァンリアンスさんの周りに漂う。それはよく見たことのあるものでした。
そう、魔法回路です。
「興味深いな。」
勝さん一号がチーズを片手にワインを煽りながら楽しげに言います。
……ワインに意味なんかないんですけどね。
かっこよくもないのです!
私だって大人になれば……。
「……封印しますが、すぐに解きます。ご安心を……」
笑顔のヴァンリアンスさんは先程と同じく額の文様から光を放ちます。
違うのは血を媒介とした拡張魔法回路を経由し、赤い光が権三郎に巻き付きついいたこと。そして、……一瞬ですが権三郎の体は絡めとられてしまいました。
そこがスイッチだったようです。
……湧き上がる激情に表情をゆがめた後、……権三郎は赤く染まりました。
巻き付いていた赤い光は、権三郎の体の内側から湧きだした【より濃い赤の光】をとどめることはできず、まるで蜘蛛の巣を払うが如く軽く吹き散らしました。
「……」
再び愕然とするヴァンリアンスさん。
一方権三郎は……珍しく感情を露にしたまま足を止めず進む。そう激情の赤。身にまとっている赤の光。そのものに表情を染めたまま。
「屈辱だ」
権三郎の声は低くそんなに大きな声ではなかった。しかし骨の髄まで響く。確かな怒りがこもっている。
「貴方を侮っていた」
権三郎は続けます。
「私にとって忘れられぬ。忘れてはならぬ。主人を奪われたあの瞬間を……思い出させてくれた」
激しい赤が権三郎に吸い込まれてゆきます。
ふむ、この量はステージ3を目指すつもりですかね……。
それに、私が教会にさらわれたことをそんなに悔いていたとは……。あれは私もうかつだったのですよ……。
「さぁ、お見せしましょう。私が偉大なる主よりいただいた……力を」
権三郎はヴァンリアンスさんの前に立ち止まると、手を広げ赤い光を完全に取り込む。目の色を赤に染め、まーちゃんレベル【ステージ2】に至りました。もうこの状態の権三郎は白龍であろうと止めることはかなわないでしょう。
先日、南方諸国で遭遇した亜神たちですら鎧袖一触とするほどの強大な力が今、権三郎を駆け巡っています。そんな強大な力を前にヴァンリアンスさんは大きく口を開いたまま膝をつき、信じられないものを見る目で権三郎を見上げています。そしてその手が、体が、恐怖に震えているように見えますが。それは無理からぬことです。
ピシっ
亀裂が入るような嫌な音が響く。……権三郎。
「勝負はつきました。ですが、これは私からあなたへ贈る……健闘賞です」
普段冷静で真面目な権三郎が、口角を上げていいます。
「そこまでです」
私が少し不機嫌気味に言うと、権三郎は冷や水をかぶせられたような表情でこちらに振り返る。同時に発していたプレッシャーを抑え込みます。
……いけませんよ。そんな捨てられた子犬のような眼をされても。この後お説教なのです。
その後私は割れ欠けた権三郎の【背中】を修復し、何事もなかったかのように食卓に戻りました。
……まったく。こんな場所でステージ3に登ろうとするなんて……。まったくもって……興味深いのですよ。
カクヨム+α
「何故通れないのですか?」
「今は取り込み中なのだ」
「お礼を言いたいだけなのです」
「今は取り込み中なのだ」
王子たち一向は状況を察してかかわりを持とうとする。
王子はああいったが、彼らは国を故国を復興させることを諦めていなかった。
これは千載一遇のチャンスなのだ。諦めきれるはずがない。
「ふむ。お主ら。相手が見せぬと言っておるのだ大人しくあきらめるがよい」
竜人マッチョがいう。マイルズから渡された乾物をワイン片手につまみながら何やら楽しそうである。
「しかし」
王子たち一向が言葉を紡ごうとしたところで。
世界を揺るがす力の波動が彼らを襲った。
一様に表情は消え。心の弱いも己は恐怖に耐えきれず、狂乱。
魔王国のエリート部隊である兵たちも恐怖にうずくまっている。
「恐ろしや。恐ろしや。彼の者たち何かあると思っていたがこれほどとは……」
そういって竜人の彼もそこで、意識を手放した。
権三郎のちからの解放に伴う影響はこれに収まらず。一部生体系を壊す一因ともなってしまうのだが……。それはまたあとでわかる話だった。
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