第37話「結論、有罪!」

「断固として無罪を主張します」

 被告人私は無罪を主張します。

 だって魔法演習場で魔法使っただけじゃないですか!

冤罪です。幼児にも人権を!


「……と言っておるが?」

 裁判長の獣王様が会議卓に居並ぶ面々に問いかけます。


「魔道具関連は禁止って言ったわよね?」

 祖母です。笑顔です。背筋が凍ります。


「如何ともしがたいぞ、他国ではな」

 祖父です。

 ……私を見てください。

 私が作った案山子の駆動部とかチェックしてますが。

 いい出来でしょ?褒めともいいのですよ?幼児的に。


「あの土属性爆裂魔法は危険だと思うわ」

 王妃様です。

 奇麗な方です。一児の母に見えません。

 よっ! お美しい!

 ……ので無罪になりませんか?


「儂は止めたのじゃ」

 ポチが『よよよ』ってしなだれてますが……、現場にいませんでしたよね?真っ先に獣王様に報告したの貴方でしたよね?素早いご対応でした。


「マイルズ様……」

 グルンド代官のバリナースさん、あきらめちゃダメです。

 無言で首を横に振らないでください。というかなぜあなたがここに?ほう、別件?興味が……あ、持たなくてよい、さようでございますね。


「ふむ、沙汰を言い渡す!」

 は、早いです獣王様!

 まるで結論ありきじゃないですか!

 もっと審査を要求します!


「却下である。被告人マイルズ。有罪! お尻百叩きの刑並びにお説教1時間の刑を処す! 引っ立てい!」

 という言葉を待っていたポチタマが両脇を固めて連行していきます。


「待ってください! 悪意は悪意はなかったのです! 多分!!」

「多分と言ってる時点で有罪確定じゃ」

 ポチ! するどい!


「あ、追加の刑罰じゃ。ホーネスト、ネロ。とっても可愛い衣装に着替えさせて記録の刑じゃ」

 んな?!


「はっ、お父様! 承りました!!」

「陛下、お言葉拝命いたしました!!」

 タマ、言葉が大人すぎます。

 お2人、そのいい笑顔は何ですか!

 いや~~、たすけて~~~。


 はい、お尻叩かれました。

 ヒリヒリです。

 そして私の尊厳さんが家出しました。もう帰ってこないかも……。

 もう、お婿に行けません!

 ……ポチ……『ではもらってやろう!』ではありません。

 ……タマ……『嫁でよければ来ますか?』でもありません。

 私の性別を意図的に間違えようとするのはやめてください!!

 ああ、尊厳さんの寂しそうな後ろ姿見えます。だんだん小さくなっていく……ぐすっ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る