第36話「なぜこうなった森の中6 魔宝技師ぽい人見参!」
こんばんは、マイルズです。
私は今、部屋の中にいます。
え?普通?うん。そうだね。
でも夜間に明かりを着けずに拳大の石をもって、これから魔道実験です。
秘密実験なのです。……何かそそられませんか?
「マスター、魔法道具の作成はリーリア様より禁止されておりますが?」
いいのです……。
これは魔道実験であって魔法道具作成ではないのです……。
「屁理屈ではないでしょうか?」
ないのです。
魔道実験は普通なのです。
学術的好奇心というなの勉強なのです。
……という事でやってみましょう。
夕方訓練場脇でやってしまった爆発事故。いささか問題になりまして…。
1つ目は爆発させてしまった事自体。
これについてはお説教1時間で終わりました。
基本的に『貴方が危ない』とのことでした。まぁ、幼児ですしね……。
2つ目は魔法力での爆破をやってしまった事です。
後で知ったのですが岩は魔法回路つまり、魔法力で影響を起こしやすい物質ではあるのですが、爆発する事象は稀有なケースらしくて何をしたのか根掘り葉掘り聞かれました。
途中『気』を使ったといったほうが無難だと気付き、また『気を使えるものがとても少ない』為、再現が極めて難しいい状況を利用して『魔法力と気を混ぜたら爆ぜた』と言い訳しました。
で、現在。
大き目の石で再現実験をしようとしています。ワクワクしますね。
なぜ、小石でやらないのかって?
理由は2つあります。
1つ、夕方にやってしまった事象は『容量超過に伴う破裂』に感じたためです。
2つ、生成過程で魔法力による圧力を与える実験を行うため小石では調整が難しい。
「……この実験……やってばれないですかね?」
「結界魔法具が3重に張られていますので即座に見つかりますよ」
何ですと!
「驚いてらっしゃいますが、ここ獣王国の貴族のお嬢様方が集まる寄宿舎です。警備もそれ相応とご認識を」
なんと!
……嫌なのです。……断固やってみたいのです!
「ダメです」
やーーーりーーたいのですーーーーー!
「もどったのだじゃ、何ぞ、駄々をこねておるのか?……おっと、その石は危ないな、儂が預かっておこう」
ひょいっとポチに石を持ち去られました。
ああ、私のモルモットが持っていかれた!!
なんででしょうか……。お家では毎日農業魔法使っていたので感じませんでしたが、魔法力使って遊んでいないストレスがたまるのです。
「魔道実験したいのです! できれば魔石使って魔法道具も作りたいのです。普通の生活飽きたのです!」
実験したいのです。
魔法回路魔石に組み込んで色々作りたいのです!
想像力ばかり膨らむのです。
自制しろとおっしゃる?
無理なのです。幼児は甘えるのが仕事なのです。我慢は毒なのです。
心は大人?
体は子供なので無理なのです(キッパリ。
「これはちょっと困ったものじゃの」
「はあ、ご迷惑をおかけします」
「しかし何としたものか、やらせてみるか?」
「いえ、それには及びません。マスターもごね続ければ疲れてふて寝しますので、お任せください」
「うむ、では任せたのじゃ」
「はい」
そういってポチは出ていきました。
権三郎は私を見守っています。
……さて、本当に私があきらめるとお思いなのでしょうか?
少し考えが甘いですね……。
翌日。
私は魔法演習場におります。
ふむ、完璧じゃないですか。この自習時間である午後を利用して遊べるのです!
しかも!
後ろを見れば魔法の標的にする大岩から小石まで豊富にあります。
『ブ――――』
ブザーがなり魔法が一斉に止みます。
皆それぞれ石や岩をもって、または土魔法で運び的を据えます。
私も同様に大型の岩を魔法で運びます。土魔法は農業魔法の基礎なのです。
案山子魔法をインストールされて以来自在に使えます。まあ、相も変わらずだれも使い方を教えてくれないのですがね…………。
さて、全員が標的を置く場を離れたところでお茶を片手に合図を待ちます。
『ピ――――』
今度は笛のようです。
笛を合図に各々思い思いの魔法が飛んでいきます。本日満員のため爽快な景色です。
うん、戦場で魔法使いとは遣り合いたくないですね。これは怖い。
さてさて、一応私のほうからも一撃放っておかないと怪しまれますね。
では言い訳魔法を………、おっとせっかくならあの魔法を試してみましょう。
私は岩に向かって手をかざします。
「封印された魔法はダメですよ。マスター」
知っております。なので今回はビームなのです。
そう、連邦の白い悪魔が画期的兵器だったのはビーム兵器のおかげ!
そのビームを魔法化しました!
ではさっそく…………。権三郎その手は何でしょうか?え、封印ですか?横暴が過ぎませんか?
「ここで注目されては実験もできないですよ?」
うぐ! 忘れていました。
そうでした今回の目的はオリジナル魔法打ってすっきりするためではありませんでした。
「しょうがないですね。では適度に……電磁投射砲にしましょう」
「アウトだと思います」
何故ですか?
もはや子供の自由研究でも可能なほど広まった簡単原理の高威力魔法ですよ?
欧米なんかでは車ぐらいなら打ちぬけるものを自作してる一般市民もいるぐらいお手軽兵器なのに……。
雷魔法を使えるようになったのでそこらの小石とシールド魔法+雷魔法で簡単高威力♪
なのですよ?
「高威力の時点でアウトです」
なっ何ですと。……ではプラズマ砲も……。
「名前を伺う限り無理ですね」
ほほう、では何があるというのですか!
「普通に土魔法で石をぶつけることをお勧めします」
電磁加速……。
「実習にロマンはいりません」
一刀両断でした。なので仕方なくやる気なく石を飛ばします。
『どおおおおん』
あ、しまった。魔法力で生成した弾丸、岩内部構造を爆薬にしちゃった。テヘ♪
「『テヘ』ではありません。注目浴びましたよ」
せっかく射撃場の様に各々見えない様に衝立があるのに、生徒たちが私のブースへ集まってきます。
うん、そうなるよね。なので、一芝居うちましょう。
「ふう疲れました、少し休むとしましょうか。権三郎」
権三郎が椅子を引いて、私を抱えお座りさせてくれます。そしてお茶を飲みます。
「皆さま、今マスターが放ちました魔法、我が家の秘匿魔法の一端にございます。ご興味がおありの方はお国を通してからお越しくださいませ」
権三郎の笑顔に、皆ひきつった笑いを浮かべ各自のブースに戻ってゆきます。
魔法使いの間で各家の秘匿魔法について積極的に知ろうとすることは宣戦布告行為です。つまり、今私が使った魔法見て伝えて警戒する分には問題ないですが、探ろうとすると潰すよ?国単位で。という事です。権三郎、恐ろしい男。あ、アンドロイドか。
では実験に戻りましょう。
まず、直系30cm程度の岩をもってきて魔法力を流します。
すると熱を持ったように白く光を放ちます。
うん、これじゃない感が半端ありません。何がダメなのでしょうか。魔法力の種類でしょうか。それともやはり『気』が関連しているのでしょうか。いや、魔法回路を敷いてみますか……うーん。
そんなこんなと悩んでいるうちに
『ブ――――』
ブザーが鳴ります。私の所の標的は……まだ健在ですね。次ぐらいに換えますか。
『ピ――――』
開始の笛、次は目立たない様に普通の魔法。雷撃魔法です。
『ドン!』
極めて常識的に収まりました。
お茶をすすりつつ、実験の継続を考えます。
そんなことを何度繰り返したでしょうか。
気づけば実習場は夕闇に包まれておりました。
もう最後の思索です。時間的に怪しいのです。
あの時との違い。いえ、そもそも何を作ろうとしているのでしょうか。
私の目的はあの白い魔石です。
では魔石とは何なのでしょう。魔石とは魔法力だまりが物質化したもの、と言われています。なので、魔法力により体質変化したモンスターなどには体内の不純物として蓄積された魔法力が硬質化して魔石になっているといわれています。
では、どのように硬質化を?
見方を変えましょう。元の世界での石、特に希少鉱石はどのように生成されるのでしょうか。超重力による圧力?
ダイヤモンドは地下深いところでマントルによる高圧力によって生成されると聞いたことがあります。
先日はどうだったでしょうか。爆発させることを目的に魔法力を際限なく投入しましたね。
……なるほど、それか!
それですね。確信めいたなにかが下りてきました!
って言ってもこの感覚本日で5度目何ですけどね!
失敗は成功の母です!
れっつとらい!
まず、岩の内部に向けて制御なしの魔法力を、意識的に高濃度にして送り込みます。
手ごたえがありました。これです。この感覚です。
じわじわと広がっていく魔法力反応を感知しつつ表層まで浸食する直前で止めます。内部の安定化を図る為濃度を下げた魔法力を継続的に投入し続けると10分後内部から白い光が放たれます。表層の岩部分を通して私たちも感知できました。光が収まると、川で拾ってきた魔石の様な魔法力をもった安定した石の感覚が私の魔法力を通して感じられます。
どうやら成功のようです。
「マスターお時間が」
そしてどうやら帰宅時間ぎりぎりのようです。
そこでハタと気付きます。私の手の中には子供の頭ほどの魔石があります。通常こぶし大の魔石をもって巨大な魔石! と言われる所それの何倍も大きなものが……やっちまった!
……まずい。お説教アンド強制帰国ルートが見えます。
何か、何か隠すもの……はっ! 木を隠すなら森!!
咄嗟に手じかな岩に手を置き案山子製造魔法を発動します。
権三郎を参考にしたので、もう可動域とか動作部分に関しては完成の域です。
一気に身長160cm程度の人型を作成します。
作った魔石は頭部の格納ユニットにポイすれば証拠隠滅です。
農業魔法で作成された案山子に手を出そうとする愚か者はいないでしょう。手を出せば無数の案山子に襲われること必須なのですし。
私は急ぎ権三郎に抱えてもらい新しくできた案山子の頭に魔石をかくのう…のーー!
格納扉作り忘れました!
どうしましょう。もう一回作るべきでしょうか。それをするには時間が……そもそも石が……。
「えい」
苦し紛れに魔石を案山子の頭にぶつけてみます。
魔石の表層の石が砕け中から半透明の白い石が出てきます。
……が、そんなの物をじっくり見ている暇はありません。
「えいや」
掛け声を変えてみました。
するとズニュと音を立てそうな勢いで案山子の頭部に魔石が入っていきます。
うわっ。きもっ。
「権三郎。この子動きますか?」
「マスター、基本行動に必要な魔法回路を組み込みましたので動くかと」
「では私たちについて一緒に帰りましょう」
そういうと新しく作られた案山子はうなずき権三郎の後ろに続きます。
これで何とかお説教は回避……。
できませんでした。……帰宅が遅れたことを怒られました。
……無断で案山子を増やしたことを怒られました。
獣王様経由で祖父か祖母がお説教に派遣されるようです。
転移魔法陣を使って。
転移魔法って触媒の価格がお高い魔法でしたよね?
お説教の為に……いえ、なんでもありません。被告人は素直に黙秘いたします!
さて、明日はどんな暇つぶしをしましょうか。
ああ、町中に出してもらえればこんなことしないのにな~(棒)
『チラチラ』
あ、目をそらされた。
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