第38話「神父様暗躍す」
「というわけで、つくるがよい!」
獣王様がドーンと現れて言い放ちます。
『というわけで』ってどういうわけ?
説明プリーズなのです。
そして、今はお尻が痛いので後にしてくれませんかね?
え、だめ?
刑罰の一つ?
都合の良い裁判長デスネ。横暴です。……あ、王様か。
「かっかっか、マイルズよ。望んでいた魔法道具作成じゃ。お題は遠隔通話魔法道具ぞ」
あ、ポチその塗り薬しみるのでそっと……あう、染みる―――染みるのです!
タマ、つんつん禁止なのです!
痛いのです……ぐっす。
「あーあ、ないちゃったじゃないかネロ」
「ホーネスト様が調子に乗るのが悪いと思います。私は優しい手つきでした」
「のう、娘たちよ。ニヤケた顔で言っても説得力がないぞ。あと王である儂を無視するのはよくないと思うぞ」
はぁ~、お尻が落ち着きません。時間を稼ぐのですよ、ポチタマ。
「もうしわけありません、お父様」
ポチ! 素直でかわいいのです! でも時間稼いで!!
で、結局作る羽目になりました。
椅子には座れないので立ってやります。
監視に獣王夫妻と祖父と祖母、ポチたまが見ております。……信用がないのですね。
早速ですが、通信って電波信号を変換する装置と集音器と再生装置が必要だ。
……考えてみれば実は既に実装されていて組み合わせるだけと考えることもできるものでもある。
では出来合いのサンプルを参照しましょう。
「権三郎カモンなのです!」
最近思うのです。権三郎の扱いがドラ〇もんのようです。私はの〇太君なのでしょうか……。将来性のある天才型ですな。
まず電気信号についてですが、先日音波魔法が楽しかったので使って遊んでいたのです。
そしてわかった点があります。
音波魔法も実は魔法力信号に一時的に変換し、拡声制御を構成制御して発音していました。
なぜ、マイクの魔法道具を作らなかったのでしょうか。なぞです。確かに音波魔法のマイクは使いやすいのでわざわざ高価になる魔法道具への発展がなかったのかもしれません。
さて、魔石はいっぱいもらいました。
自分で作ろうと思ったのですが祖父より禁止されております。
なので早速一番小さな指先ほどの魔石を使って試作壱号を作ります。
・音波を受信する
・受信した音波を魔法力信号へ変換
・音量制御数値に2を設定
・音量制御数値を出力振動の倍数を掛け、音波発生を生成
ここまで作ったところで権三郎の喉を触ります。
人間みたいに動きますね、この喉。……アンドロイド半端ないっす。
おっと、魔法回路の構成を読み取らねば。……めんどくさい。コピーできないかな。
「できますよ」
ほえ。マジっすか?
「はい、この魔石ですよね」
そういうと、権三郎は魔石を手に取り自分の喉に当てる。権三郎が一瞬光った。
「できました」
はやっ! コピペかなんかですかね?
早速中を見てみましょう。
・音波を受信する
・受信した音波を魔法力信号へ変換
・音量制御数値を使用者の魔法力を設定
・音量制御数値を出力振動の倍数を掛け、音波発生を生成
・【コピー回路:音波出力】
じゃ変えよう。
・音波を受信する
・受信した音波を魔法力信号へ変換
・音量制御数値を使用者の魔法力を設定
・音量制御数値を出力振動の倍数を掛け、音波を生成
・受信面と反対面に【コピー回路:音波出力】【生成した音波】
完成! じゃ回路定着なのです! ほいさ!
光り出しました。後はしばし放置です。あとは通信用の電波ですかね。
これも実は祖父から教えてもらいました。
実際に先日作った案山子の制御魔石が私の魔法力の固有波と同じ波形とかでした。
権三郎の案山子ネットワークには乗れないらしいのですが、私との同期は可能だとか。ということで先ほどポチタマ&獣王様の親子漫談中に試しました。視覚同調できてビックリでした。というかおもちゃゲットなのです!
……?
あれ新しい案山子がいやそうな顔しませんでしたかね?
気のせいですね。
「ルカス殿、あれはなんじゃ……」
「わからん。だが、魔法道具はあのような作り方はせんはずだが……妻よ、その辺りどうなのだ」
「あたり前よ。普通は小型の魔法道具でもオリジナルであれば回路設計を1週以上、魔石内に精密回路構築に3週はかかるわ。この間の様子からすぐ作れるのかと思ったけどあれが本当に完成するのであれば異常よ」
「面白そうね、どうなるのかしら」
「お母様、しっぽ出ております。ぶんぶんです。はしたないのじゃ」
以上、外野の皆さんでした。
異常とか、おかしいとか、このキュートなマイルズ君に似合わない言葉なのです!!
撤回を求めます!!
……あ、誰も聞いてくれませんよねー。あ、棒とかありますか?
短めでいいので手で持てる程度の。
祖母がこの間作ったステッキを出してくれましたおよそ20cm位に短くなっておりましたがぴったりです。
そうこうしている間に光が収まりました。
魔石をのぞき込むと5本の線が入り組んでいました。たぶん完成。
テストなのです。軽く魔法力を流して。
「テストなのです」
『テストなのです』
自分ではわかりません。
「おお、音が出ておるな!」
獣王様が興奮気味に言う。
「人間には聞こえんな」
祖父が残念そうです。
獣王様のお墨付きが付いたのでステッキの先に接着させます。
今度は少し強めに魔法力を流します。
一度魔法力回路を構築したステッキは魔法力の通りがいいですね。
では行きます!
「テストなのです」
『テストなのです!!!!!!!!!!!!!!!』
……窓ガラスが割れました。音波兵器なのです。
……祖母にこってり絞られました。
なんか人間側にも作れと言われたので、さきほど権三郎がやったようにコピーしました。
どうやら普及している魔法道具はこのようにコピーして作られているようです。
「普通は専用魔法道具を使って1時間ぐらいかけるのだけどもね……」
専門家の祖母は不満顔です。
でも知っています、マイク魔法具にご満悦で頬が少し緩んでいることを。
さて、サンプルができたので本物を作りましょう。
「よろしければ、作成の際には私の音声制御回路をお使いください」
権三郎がそう言って小石の魔石を渡してきました。できる案山子なのです。
そしてその後、時間が来て家臣に引きずられてゆく獣王様と祖父を尻目にワクワク顔の王妃様と祖母が見守る中、通信魔法道具を作成しました。とりあえず4セット。
ちなみに、周波数設定ですが魔法力入力による可変式しました。
いやね、そんなことすると通信できなくなりそうなのですが、使うときは事前に魔石同士を合わせて魔法力波形を同じものにすれば使えるのです。
トランシーバより使えない気もしますね。でも通信範囲がどこまで行けるかとか周りへの影響で何がるかなの不明な点があるので初めはこんなものでしょう。
さて、皆さんお気づきでしょうか。
通信実験が進めば進むほど、私の外歩き用の体が手に入るという事を。
後日、神王国へ出張した祖父と自宅の祖母が通信できたので通信範囲が世界一周可能なことが証明されました。
これが何を言わんとしているかわかりますか?
魔法力の波形が設定できるのであれば私が作った案山子を遠隔操作可能!
つまり……うふふ、外歩き用体ゲットだぜ!
義体だよ全身義体!
倒したと思ったか?残念それは私の義体だ!
そんな燃える展開が私をまっています!!
祖母たちに見えない様に軽快なステップを踏む私でした。
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