第31話「なぜこうなった森の中1 留学幼児」
ハンター組合に到着しました。
……こう言っては何ですが、割と普通の建物でした。
寂れた感がありません……。
なんか剣とか酒とかの看板が出てるかと思ったのですが、出ているのは普通に落ち着いた文字で『ハンター組合グルンド支部』と書かれておりました。
更にその下に『依頼募集中。貴方の悩み、ハンターが刈り取ります!』。
……うん、頑張ってる感が出てていいと思います……。
さて入ろうかと思ったら中から剣を背負った人が出てきました。
こちらに気づいたのでしょう、扉を内側に開くとドアノブを持っていない手を開いて笑顔です。
う、うん。教育が行き届いているようで。
「ありがとうごじゃいます!」
ついつい舌っ足らずボイスでお礼を言うと満面の笑みでした。
いい人ですね。
中に入ると2つの大きなフロアに別れていました。
『←依頼・素材売買カウンター ハンターカウンター→』
ミリ姉に会いたいのでハンターカウンターですね。
初めに権三郎にはハンターカウンターフロアへ向かってもらいます。
そこでふっと異世界好きの後輩君が語っていた【冒険者組合での鉄板ネタ!】について思い出してみました。
『先輩! 異世界で仕事始めるといえば、なぜだか大金をくれる冒険者ギルドっすよ!』
懐かしい笑顔の後輩を思い出す。
『なぜだか大金をくれる』ってとこがもう否定はいってない?……まぁいいか。
『あれっすよ。困ったら薬草拾ってくるだけで、宿泊まって飯食えるんですよ。脅威の金払いの良さ! もう中間マージンゼロな上に助成金払ってるんじゃないかって思いますよね!』
ねぇ、私に異世界のいいところ話したいんだよね?
もしかして、ディスりたいの?
なんか後者の気がしてきたよ、先輩としては。
『そのな生ポ………じゃない、手厚い冒険者組合ですが新人登録時はお約束があるんですよ「がはは、なよっちいのが来たな」とかいって、わかりやすいマウンティングで上下関係をはっきりさせようとする悪役面の中堅! もうね助成金の悪影響としか思えない感じで……』
絡まれるお約束ですね。それ以外は流しましょうか。
『で、ババーンとやっつけちゃって一躍注目新人になるんすよ! それから実力者とコネができて、ウハウハ大儲けライフっすよ』
やくざ?
……いや、今のやくざはもっと頭使わないと評価されないか。
…‥あれですね、学校の不良だ!
ああ! なるほど。納得です。
…‥この世界では何が起こるのでしょうか。楽しみですね。
そんな考えを抱きながら…‥権三郎から降ろしてもらい、ハンターカウンターへ向かいます。
廊下を抜けると広いフロアが開けてきました。
手前にカウンター、右に依頼やハンター達の連絡板がありどちらも昼過ぎだからか…‥数名程度しか人がいない。
奥を見ると大きな通路を挟んで食事処があった。
よく見れば右に外に通じるドアがありました。
…‥ああ、あの同じ建物の食事処のドアってここにつながるのですね。
ふらふらと物珍しさに歩きます。
何人か声をかけてきますが、いたって普通です。
時に頭をなでてくれるハンターまでいます。
…‥お約束がないまま食事処まで到着です。
このまま扉を出て帰ってしまおうかと思ったところ…‥テーブル席から私に好奇のまなざしを送るスキンヘッドとモヒカンがいました。
これですね! お約束の中堅ぽいです。さぁかもん、新人いびり。
「坊主…‥」
きた! スキンヘッドが鋭いまなざしで私を見ます。
「お使いか?偉いな」
がっかりだよ!!!
「おいおい、かわいそうだろ。俺らみたいな強面の男があんな小さい子に声かけられたら、怯えちゃうだろ」
モヒカンもまさかの良い人!
「坊主、突然悪かったな。そうだ、つまみでよければ一口食べるか?」
ダッシュ! モヒカン、あなたいい人ですね。…‥うん、この塩っけがたまりません。お酒がほしいですね。
「おお、素直でかわいい子だな。旦那の子かい?」
「いえ、我が主人のお孫様です」
「ほう、でこのハンター組合に何かようなのかい?」
……ハムハム。いい味です。お昼ご飯ここで食べてもよいのかも…‥。
…‥何肉なのでしょうか気になります。
「マスターの希望で、ミリアム様のハンター姿を見たい、と」
「ほほう、あのアルノ―の串刺し姫の弟か!」
ん?串刺し姫?あの可憐なミリ姉に何て名前をつけるのですか!
ミリ姉は2年したら王都でアイドルデビュー待ったなしのお方なのですよ!
そして私のお財布を潤してくれる大切な商材なのです。呼び方注意なのです!!
「坊主、噂をすれば来たぜ」
食事どころの扉が開き白い軽鎧に身を包み、剣を2本腰に刺したミリ姉と16・7歳の少年少女5名が入ってきました。
数歩歩きミリ姉がこちらに気づきました。
このモヒカン、スキンヘッド、権三郎with私が座るテーブルに。
「おかえり!」
笑顔で媚を売ります。……が、ミリ姉はため息をつくと背負っていた袋からアレを取り出します。
ななぜそれを!
ていうか常に携帯!
いや………、い~~~や~~~!!!!
人権さんが………、人権さんが家出しちゃう!
ここはにげ……られませんでした。……リード付きのベストを着せられます。
食事処もハンターカウンターも美少女が犬の様に幼児を連れるその姿に癒されたのか、かるく『おお』と感嘆が漏れています。
「その子が?」
黒い鎧の男がミリ姉に尋ねます。
「ええ、うちのバ可愛い弟マイルズよ」
その呼び方は断固拒否……はい、できないんですね。そうですよね人権さんが不在では主張もできないんですよね。
「たしかにバ可愛いな」
「うむ」
「なるほどこの子が噂の奇天烈幼児」
「「かわいい~」」
男3人はいいのです。それよりも、最後のお姉さん2人!
ありがとうございます。貴方の癒し、マイルズが今参りま……ぐはっ。
駆け寄ろうとしたところ、リードが張ります。
「「バ可愛い~」」
……残念ながらお姉さん達が敵に回りました。
その後ミリ姉の依頼報告など興味深い仕事見学をして家に帰りました。
帰る前にモヒカンとスキンヘッドにお礼を言うと『また来いよ』と、やさしい言葉をもらいました。いい人たちだ。
でハンターと全く関係ないのですが、帰宅後夕食の席で祖父から唐突な宣言を頂きました。
「マイルズ、明日から獣王学校に留学生としていってもらうぞ」
「へっ?」
異世界は説明不足が常態化しています。基本から構造改革が必要です。と強く訴えたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます