第32話「なぜこうなった森の中2 ポチと呼んだら親衛隊さんが飴ちゃんくれました」
獣人の都っていうじゃないですかー。
森の中でー、暮らしてるって―、いうじゃないですかー。
秘境の中でー。
お肉中心で―。
モフモフパラダイスーって思うじゃないですかー。
ヒャッホー自然児!
………って、浮かれた私に罪はない。
昔、地元の自然公園でターザンごっこした思い出とか。
自然が僕たち私たちの遊び場ですとか。
あると思うのです!
だからそう思っていても問題ないのです!
……そうです。
……そう言えばグルンドの街の南門だけ石造りの街道でした。
広くて立派な道でこまめに自立型獣避け魔道具の設置とか、見かけた気がします……。
馬車で南に進みほんの2日の距離で獣王国の王都に到着しました。
……正直、うち(グルンド)の都市より立派です。
街に近づくと牧歌的な風景が永延と広がります。
……トラクターではなく大型の生物とその後ろに繋がれた大型農具を動かす光景が目に移ります。いわゆる大規模農園ですな……。
ようやく王都が見えてくると巨大な都市でした。
人間の侵略が絶えなかったらしく、うちの街ができるまでは人間と一番遠い場所であり、かつ一番利点のある立地に立てたそうです。
我が町グルンドに何があったのでしょうか?
極最近できたのでしょうか?
その割に巨大都市ですが……不思議都市ですね。
さて、ここ獣王都に入る前に、説明がありました。
獣王都は北に『広大な農地を持つ』私たちの街と、西に獣王国最大の『港湾都市』、港東に石切り場、南に広大な『聖なる狩場』を有しているとか。
そして昨今、どなたの影響か知りませんが北と南に自前の農地が広がっている、と。
更に近年、北との交易が大きくなってきたので街道整備に進んでいるとか……。
大陸有数の都会だとか……。
人口すごいぞとか……。
……獣人が人間より文明的な生活してる……。
いやさ、ポチタマで知っていました。
……知っていましたが、納得するのとは違います。
うちの街にも多くの獣人達がいたので理解はしていましたよ、ええ。
……でもね。
……でもね。
獣王都に来て会う獣人の方、揃いも揃って知的な方が多いのですよ……。
女性は、オホホさん。
男性は、イケメンキラキラさん率高いのです。
ポチタマの様なおバカなお犬様おネコ様のような方がおりません!!
あーーーー、私の夢が壊れてゆく……。
権三郎という護衛がいるとはいえ、3歳児を旅に出して安心できるはずです。
……仕方ありません。真面目に留学生をしましょう。
獣王都に到着して1日目は宮殿にご宿泊しました。
ポチタマは寄宿舎にいるようで獣王様と王妃様が迎えてくれました。
獣王様も王妃様もなぜだか、私の服装に、疑問を抱えてらっしゃいました……。
なぜでしょう?
ふむ、お食事ですがシンプルな味付けの肉料理が多いですね。
…‥野菜は?祖父の野菜美味しいですよ?あ、地元産のモノを渋々食べてる……。
……! そうだ! ドレッシング! そうですあれがあった! マヨは……。
はぁ……アレルギー出るほど嫌いなのですか……じゃ、ケチャは?ああ、お気に入りですか。はい、うちの街で商品化してます。うん、買えますよ。ですから王妃様。その獲物を見る目はやめていただけませんか?お願い。
2日目、獣王様と王妃様に挨拶をしてから、留学する学校に顔を出します。
なお、滞在10日の短期留学です。
……もうこの流れならわかりますね?ええ、学校?迎賓館ですよね?これ?
っていう立派な建物に連れていかれました。
校長室では校長と名乗ったきつい目をした細長いレディに、制服と私が留学する先の担任を紹介されました。
皆さん、白いシャツと紺色のロングスカートでシックにまとめられています。
廊下を歩いていると通り過ぎる生徒たちはみな、色とりどりのリボンでおしゃれを主張しているようです。
担任教師に案内されつつ、校内を歩いていると、中庭に見慣れたお犬様を見つけました。おネコ様は不在のようです。
担任教師が『あの方と同じクラスですのでご挨拶しましょうか』と案内されます。
「ホーネスト様、予定しておりました留学生をお連れしました」
「はい、ご苦労様なのじゃ」
それは白いテーブルと白い椅子に、他の生徒と同じ制服に袖を通しながらも一線を画す存在感。佇まいに優雅さをかもし、洗礼された仕草で紅茶を口に含むお嬢様が座っていました。
「ホーネスト様、お久しぶりです」
ポチは私の言葉を受けて、はじめてこちらに目を向けます。後ろに控えている親衛隊の6~10歳ぐらいのお姉さま方5名もこちらを見ます。
「マイルズ殿、久しぶりじゃの、と言っても2週間前にあったか」
「ええ、いつものお茶会でお会いしましたね」
「こちらには転送でいらしたのかの?」
「いえ、馬車にてまいりました。素晴らしい景色に感動いたしました」
「うむうむ、よ……」
なんか背中がかゆくなったので、ポチの話を途中で遮りました。
「ポチ、お手」
『バウ!』
獣化して右手を置きます。
ポチ呆然。
親衛隊フリーズ。
教師ワタワタ。
「よしよーし、ポチはかわいいですねー」
モフモフしてあげます。
ポチご満悦。
親衛隊お顔が真っ赤。
教師いいもの見たと満足。
「マイルズ様」
獣臭くないポチをモフっていると、親衛隊のお姉さまが声をかけてけくれます。
そして、
「ごちそうさまでした。はぁはぁ」
と言いつつ私の頭をなで飴ちゃんをくれました。
何故でしょうかあまりうれしくないです。
「でじゃ」
お姫様モードのポチが場を仕切り直します。
「マイルズよ、ようこそ獣王女学校幼年舎へ」
…………………………イマナンテイッタ
「驚いておるな。ふふふ、我が策略成功セリ! ふはははははは。のこのこ『男』が女子校へよく来た!」
今手にしている制服は……ジョシノカ。
そうか、年齢的にバン兄のはず、もっと言えばまだ神様と会ってないザン兄でも問題ないはず。
なのに私……。
裏があるに決まっているのに……迂闊!
「皆の者! お着換えの時間じゃ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
皆さん目が危ないのです、6人一斉に返事って……6人?
親衛隊は5人のはずですね。うん、先生?その肩に置いている手は何なのでしょうか。
あ、力強いですよ。それは逃げられないです。
……ほう抱っこですか。うちの女性陣より胸部装甲が厚いですね。至福です。
「マイルズよ喜ぶがいい。3歳児にしても小さな貴様の為に制服も特注しておる!」
そんなお気遣い無用です!
なぜでしょうか。これは。
「ふふふ、父上に『マイルズ本当は女の子』って吹き込んでおいて良かった」
ヲイ!!!!! 何てこと吹き込むんですか!
「安心するがよい! 帰るときにはネタ晴らしする故! あ、権三郎殿記録宜しくなのじゃ!」
「お任せを、お嬢様」
権三郎が裏切りました。
「それがルカス様とリーリス様と結んだ約定じゃからのう! さぁマイルズよ獣王女学校を堪能するがよい!」
ということで、いろいろな大人とポチにはめられ、私は今ここにいます。女子の制服で、若干大きかったのですが、それがまた一層かわいいとか言われ。ウィッグをつけられてロング状態で。今は私はここにいます。
……もう好きにして……。
………………あ、お爺様お婆様。私を……ウリマシタネ?
【まーちゃん閻魔帳に、アタラシイページガフエマシタ】
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