第十話 もうがんばるしかないさ

「って、地道にやるしかない、か」


 缶を三本ほど空けたところで踏ん切りが付く。


 起動中に止まっているが、そこで root のパスワードを入れることで手動でのディスクチェックが可能。


「 fsck 《file system check》っと……」


 ディスクチェックコマンドを実行すれば、出るわ出るわのエラーの嵐。


 その度、修復するか問われるので『 yes 』の y を入力してエンター。


 無条件で yes を選択する -y のオプション付けとけばよかった、と後悔しつつも、途中で止めることで何かあっても面白くない。


 なんだか、 Y キーを押すだけのマシーンと化した心境だけど、確実に前に進んでいるのは間違いない。


 ここまできたら、もう、頑張って終わらせるしかない。


「何百回、押したかしら……」


 カチャカチャとキーの音が響く一人の部屋で、ふと、我に返る。


 目の前には、修復ログが延々流れるディスプレイ。


「もっと、かな?」


 結構な時間が過ぎている。


 これだけやっても、正常にデータが取り出せる保証はない。


 だけど。


「なんだか、楽しくなってきたわね」


 なぜか、妙な高揚感というか酩酊感を感じて、カッチャカッチャとキーを叩き続ける。


 と。


「あ……終わっ、た?」


 流れていたメッセージが止まり、入力待ちのプロンプトが表示されていた。


 コマンドの結果としては、修復成功、ということになる。


「でも、なんだか読めないからこのファイル切り捨てるね(意訳)って感じのメッセージも沢山出てた気がするから、どうなるか……」


 ドキドキしながら、再起動のコマンドを叩く。


 reboot

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