第59話 こんてすと 5

「はぁい、ロスっちよー」

「えーっと、ロスっちね。こんばんは」

「よろしくね~!」


 会場に小さく手を振って声援に応える余裕さが見える。親友のアミメキリンが見守る中、マーゲイの質問が始まった。


「えー、意気込みが『楽しそうだから参加した』って単純な理由なのだけれども……。まぁ、こればかりは否定できないわね。私も“挑戦してみよう”って所から始まったのだし、理由なんて皆こんなものよね」

「うんうん。それに、“楽しい”ってとっても大切なことだと思うの。キラキラで楽しい毎日を送れたら、それってとても良いことでしょ? このイベントはとてもキラキラしてるから好きだよ」

「あ、ありがとう……。参加者含め、フレンズの皆が温かくて感謝し切れないわ」

「いえいえー。また機会があったら呼んでほしいな」

「も、もちろんですともっ! その長いまつ毛に細く締まった体……。ふわふわの後ろ髪に巻かれた横髪、整った顔立ち……。ハァ――!!!! 良い……はぁはぁ……、モデルに是非っ!!」


「マーゲイ……、進行に支障が出てるわよ……」


 舐め回す様な視線でロスっちを見詰めたマーゲイが興奮気味に解説をしていた。その様子に呆れた表情を浮かべながら、プリセンスが抑止する。


「あはは……。大丈夫?」


 思わずロスっちも苦笑して、身を案ずる。


「……問題ないわ。少し取り乱してしまったわ……」


 ずれた眼鏡をクイっと戻す。

 マーゲイは間近で接して、ロスっちの魅力に中てられてしまった。マーゲイにとっては、この様な事はそこまで珍しいものではない。そう彼女は、単純に可愛い女の子が好きなのだ。


 そして再び、平静を装い進行を再開する。


「今回の衣装は、オマツリユカタ(ギャル)よね。選んだ理由とかってあるのかしら?」

「うーん、そうねー。とりあえずは、キラキラで可愛いって感じぃ?」

「なるほど。ロスっちの基準には“キラキラ”ってやつがあるのね」

「ピンポーン! その通りだよ~」

「ショウジョウトキで言う所の“赤”と同じ様なものね。フレンズにはそれぞれに見解の相違があるもの。だからこそ、皆の個性が際立ってこういう催しが行えるのよね」


 すると、プリンセスもマーゲイの意見に同意して付け加えた。


「そうね。私達PPPだって、皆が違う役割で支え合っているからこうして華のあるグループになったのよね」


 プリンセスの自画自賛気味の発言に、コウテイが横から口を出す。


「それ、自分で言うか?」


 他のメンバーも何処かほころんだ表情を浮かべていた。


「良いのよっ! 私が言いたいのは、つまり、姿形が違っても、こうしてフレンズ皆で笑顔で居られるのが嬉しいってことよ」


 発言した後、恥ずかしさの余りプイっとそっぽを向くプリンセス。


「プリンセスさんの言う通りですね。又、皆さんと一緒にフェスティバルを開催出来れば良いなと思います」

「何だよ、プリンセス! 言ってくれるじゃねーか!!」

「楽しいの、すきー」


 PPP全員が続いてコメントした所で会場からも色んな歓声が上がった。沸き立つ声は様々で、第二回を切望するものや、プリンセスへの冷やかし、参加宣言やリピーター表明など多くの反応が見られる。そのどれもが、温かいものであり、この催しへの関心の高さが垣間見えた瞬間であった。


「マ、マーゲイ!! はい、続きを!!」

「了解です。PPPの皆さんの素晴らしい意見を聞けたところで……」

「もう、茶化さないでよ……」

「いやいや、とても素敵なコメントだったわ」

「うんうん。それに私、PPPがこんな間近で見れるなんてラッキーだよぉ~」


 ステージ上で手振りするロスっちにPPPも笑顔でそれに返した。そんな所で審査は終了し、ロスっちはステージ裏へと戻っていく。


「いやー、緊張したよ~」


 ステージ裏には、審査を終えたショウジョウトキとそれを控えるヨーロッパビーバー、アライさんの姿があった。入れ違いでコモモが審査の真っ最中であり、いよいよコンテストも終盤へと差し掛かる。


「どう見ても、緊張している様には見えないのだ!!」

「私と同じく、自信有り気に見えます(ドヤァ)」

「いやぁ~、口だけでも言っとかないと、と思ってねー。テヘ☆」

「素敵な雰囲気だったよー」

「あれは、プリンセスのおかげもあるかな? ありがと」


 ステージの裏側で喋繰り合うアライさん一同。その反対側では、現在進行形でコモモによるメルヘンで独特な愛の世界が会場を包み込んでいた。欲望満ちた、だけども、美しい世界観。血の様な濃い赤と、ポイズンチックな紫のオーラ。衣装に見惚れる前に、彼女の存在感が既にそれを凌駕していた。まるで一つの違う世界を見ている様な、そんな審査が、濃厚なインパクトを与えて終了する。


「うふふ……」


 彼女は微笑し、そのステージを去って行った。


 それと同時にヨーロッパビーバーがステージ至近へと向かっていく。途中、擦れ違いでコモモはヨーロッパビーバーと小さく頷き合い、アライさん達の元へと戻っていった。


「もう終わったのか?」

「えぇ……。良いステージになったと思います。ふふ……」


 端的に感想を述べた。

 不敵な笑みはいつもの事だが、その表情には審査を終えた彼女等同様に隠し切れない自信が含まれていた。


「ミス・フレンズは私、ロスっちで決まりでしょー!」

「いいえ、ショウジョウトキです」

「私の愛こそが本物よ……」


 審査済みの三人が又しても言い合いを始めた所で、アライさんは皆の元をこそっと離れてヨーロッパビーバーの所へと向かう。


「アライさん、お互い全力で戦おう。ま、戦うのは衣装なんだけどねー。ん? 正確に言うと、衣装選びのセンス? かなー?」

「うむ。全力なのだ。アライさんがジャパリコインを手にするのだ!!」


 丁度その時。

 他のフレンズの審査が終わり、ヨーロッパビーバーの出番が巡ってくる。マーゲイの合図と共に、彼女は光り差すステージへと向かって行き、一つ言い残した。


「譲らないんだからっ!!」


 その背中は戦いに出向く勇姿そのもの。

 アライさんからの位置では、その表情は読み取れない。

 しかし、彼女はきっと笑っている。そう、自信に満ち満ちた表情で。


 アライさんはそう確信して、ライバルを送り出した。

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