第56話 こんてすと 2

「オオカミさん、いよいよコンテストですよ」

「そう……みたいだね。アライさんはこれに出るのかしら?」

「そう聞いてます。間に合ったのでしょうか?」

「どうだろうね……」


 フェスティバルを楽しみつつ、心の片隅で気にかけていたリカオンが不安そうな表情を浮かべた。すると、その懸念を晴らす様にフェネックとアミメキリンが二人の元へと合流する。


「フェネックさん!!」

「すごい……、フレンズの数だねー……」

「間に合ったのですか?」

「うん。アライさんを送り届けてきたよー」

「それは良かったです。急いでいた様でしたので……」

「心配してくれてたのかー、ありがとうー。けど、色々と大変だったよー。あはは……」


 先程までの事を思い起こして、苦笑するフェネック。

 二人の会話からある程度の察しがつくと、オオカミは初見の二人に絡みにいく。


「君が、フェネックだね……。それと……」

「アミメキリンだよー。よろしくねー」

「二人共、初めまして。私はタイリクオオカミよ。オオカミと呼んでくれて構わないよ」

「オオカミかー、アライさんから色々と聞いていたよー。よろしくー」

「そのアライさんはコンテストに参加する様ね?」

「そうだよー。多分、最後の方に出ると思うんだー」

「楽しみだね。きっと良い絵になるに違いないわ」


 すると、会場最前列のフレンズ達がざわつき始めた。そのヒソヒソ声を遮る様に、マーゲイが声を発する。


「皆さん、お待たせしました!! いよいよ、けものフェスティバルのメインイベント、ファッションコンテストの開催です!!」


『おおおおおおおおおおーー!!!!』


 会場が歓声に沸く。

 今回の催しを聞いて逸早く駆け付けた熱心なフレンズ達の殆どは、ステージ至近の最前列に立っている。そして、彼女達の一番の目的はこのファッションコンテストだ。初めての競技会で、胸中はドキドキとワクワクに満たされていた。


「始めに、各ちほーからこの催しを聞いて、参加して下さった皆さんと会場に来て下さった皆さんに、運営スタッフを代表して感謝します。ありがとうございます!! では、コンテストのルールについて、運営スタッフのヘビクイワシから説明いたします」

「皆さん、こんばんは」


『こんばんはー』


「わたくし、ヘビクイワシでございます。随分と日が落ちてきましたね……。照明の方、入れましょうか」


 夕方頃に開始した催しは現時点で数時間に亘り続いている。時刻は既に夜へと差し掛かり、周りの視界が悪くなる頃合。一部のフレンズにとっては、活発化する時間帯でもある。しかし、会場に集まるの殆どのフレンズが昼行性であるのは、この場に居る事で証明されている事柄であった。


 ヘビクイワシの合図で、会場付近に設置された照明のスイッチが入る。ステージに向けた光りは、暗夜のへいげんを灯す光明となり、多くフレンズ達を感動させた。会場は、先程までとは異なる独特の雰囲気を醸し出す。


「良いですね。では、簡潔にルールを説明していきます。本コンテストは点数法により総合順位を決定していきます。5点満点とし、審査員五人に点数をつけて頂き、合計得点の高い方が優勝になります。審査員の得点に関しましては、運営のみに公表する形とし、又、総合順位に関しましても、最終の結果発表時に“ミス・フレンズ”“準ミス・フレンズ”のみ公表する形をとらせて頂きますので、予めご了承下さい。因みに、ミス・準ミスの内、どこかで点数が同数だった場合は、決選投票を行います。説明は以上になりますが……、よろしいですかね?」

「大丈夫……、そうですかね? ではでは、審査員の五人に再度、登場して頂きましょう。PPPの皆さんです!!」


 マーゲイの掛け声と共に、ステージの裏手からPPPの五人が登壇する。


「また会ったわね!! 今回、審査員を務めるPPPよ」


『ペパプ~!!』

『ライブ以外で見られるなんて……』


「イベントゲストとして参加した訳だけども、やっぱりライブ以外で出るのって新鮮ね」

「多分、初めてなんじゃないか?」


 プリンセスの言葉にコウテイが反応する。


「まず、三代目PPPとして出るイベントが初めてなんじゃ……」


 冷静にジェーンがツッコむと、フルル以外のPPP全員がこぞって「あっ」と口を開いた。


「どうしたんだよ、緊張してるのか?」

「えー、私、緊張してないよー」

「お前じゃないよ!!!!」


 冷やかした方の逆方向からの応答を受けイワビーがツッコむと、先程の漫才同様に会場から笑声しょうせいがこぼれた。


『あはははは……』


「良いんじゃないか。イワビーとフルルの漫才コンビ」


 コウテイがクールに可能性を指摘する。


「おーっと、まさかのツリーボアズにライバル登場かぁ~!?」

「マーゲイも乗らなくていいから……。うう゛ん、こんな感じで審査員を務めるから、よろしくね! 勿論、審査は真面目にするから安心してよね」

「ではでは、PPPの皆さんはあちらの長机の方へお願いしますー。あれが審査員席ですので」


 ステージの端に設置された白布はくふの敷かれた審査員席へと移動し、PPPの五人が着席する。と同時に、マーゲイも逆端へと移動すると、ステージ中央を空け、照明の光りも一部に絞られた。


「では、さっそく行きましょう!! エントリナンバー1。雪の様な白い肌と綺麗な髪を持つ、ゆきやまちほーNo.1イチの美女、ユキヒツジ!!」

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