第47話 うわさ
「私はしんりんちほーから移動してきたのですが、ちょっとしたお話を耳にしまして。今日の夕方頃、へいげんで何やら“催し”があるそうなのですよ」
「催しですか? あら、興味ありますわね」
「もよおし? とは、なんなのだ?」
「イベントのことだよー。アライさん」
「気になるのだ!!」
リョコウバトの話の内容に、こぞって興味を抱く一同。
「それがですね、何やら“ファッションコンテスト”と呼ばれるものらしいのです」
「ふぁっしょん……? それは美味しいのか?」
「食べ物ではないよー。衣服の競技会のことだね。アライさん、スカイレースの様なものさ。ルールに則って、衣服で勝負するんだよー」
「なるほど、理解したのだ!」
「フェネックさんの言う通りですね。そして、優勝賞品はなんと、“ジャパリコイン”だそうですよ」
「珍しいものが出てきましたね。最近では見る機会が、きっかりなくなりました」
クジャクが冷静に解説をした。
ジャパリコインは昔、ジャパリパークで使われていた通貨である。今では、その希少価値からフレンズ達の間ではレアアイテムとして知られている。
「フェネック!! 帽子さんが持ってたやつなのだ!!」
「んー、懐かしいねー」
「フェネック、へいげんは通っても大丈夫なのか?」
「んー、そうだねー。今がこはんだからー……」
「そうですね。こはんはすぐそこにありますよ」
フェネックはこの時、応答を受け、気が付いた。
知り合いの中で、最もジャパリパークの地形に詳しいフレンズが、この場に居る事を。
「そうだよー。リョコウバトに聞けばよかったんじゃないかー。いやいや、気が付かなかったよー」
「?? ……! どこかに向かわれているのですか?」
察しの良いリョコウバトは、すぐにその意味を理解した。
「うん。目的地はサンドスターの吹き出した地点でねー……、えーっと」
アライさんが見た直後の感情を乗せたまま、説明を付け加える。
「大きな光りが塔の様に上がったのだ!!」
「あら、それはいつのことですの?」
「興味ありますね」
「えーっと……、フェネック。いつだったっけ?」
「確かー、二日前? くらいだったよー……」
「わたくし達は見ていませんわね?」
「そうですね。その様なものは……」
シロクジャクとクジャクが確認の為、顔を見合わせた。
「博士達が言うには、“標高の高い場所”ってことらしいんだよねー」
「なるほど。でしたら、まずはゆきやまちほーに行ってみてはどうでしょう? 違った場合に、そのままこうざんへと向かえますし、ルートとしては最適かと思います」
「決まりかなー。それで良いよね? アライさん」
「うむ。フェネックに任せるのだ。アライさんはフェネックを信じているのだ」
「照れるじゃないかー。あはは……」
「目的地がゆきやまちほーですから、こはんを左手に直進して下さい。しばらくしますと、
「大移動ですね。私達もいつかそんな冒険をしてみたいです」
「正しく、大冒険ですわね」
「その通りなのだ!!」
「んー……。すると、へいげんは通過点となるわけだねー。やったね、アライさん」
興味を示していたへいげんの催しは夕方。
だとすると、二人は現地点からそれなりの移動をしなければならない。これが鳥のフレンズであれば、悠々と飛行して時間に間に合う事が可能だ。しかし、二人の今までの傾向を考えると、フェネックの不安は絶えない。
「だけど、時間が厳しいかもしれないねー。どうする?」
「勿論、行くのだ!! アライさんの時代のためなのだ!!」
「だと思ったよー」
祭りある所にアライさん在り。トラブルある所にサーバル在り。
言うに及ばず、予想通りの解答にフェネックも思わずにやける。
「催し、参加されるのですか? 私も一度、見ておきたかったです。今度、お話聞かせて下さいね」
「わたくし達も参加したいのですが、この後、用事がありますの……。残念ですわ」
「今度会った時に、話を聞かせて下さい」
「分かったのだ!! アライさん達はそろそろ行くのだ!!」
「そうだねー、あんまり時間はないみたいだし。ありがとうー、みんなー」
「お体に気を付けて!!」
「さようならー」
「アライさん、フェネックさん、どうぞ良い旅を」
「ありがとうなのだ!」
「ばいばーい」
こうして、二人は嵐の様にその場を去る。
鳥の会にお邪魔して、噂話を耳にしたアライさんとフェネック。
次なる目的地はゆきやまちほー。そして、通過点に位置するへいげんである。興味を抱いた催しには参加する事が出来るのであろうか。それは二人のこの先の進行次第である。
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