第46話 とりのかい

 少し前。

 林の中で密かに開かれた鳥の会。

 鳥類のフレンズ達が世間話で盛り上がっていた。


「あちらの空はいつもより暗くなっていましたよ。何かサンドスターの影響があるのでしょうか……?」

「まぁ、それは不穏ですわね。やはり、平穏が一番ですもの……」

「そうですよね。出来ることならずっと平和でいたいものです」


 広範囲に渡り、色んな地域を飛び回る鳥類ならではの情報収集能力。それは多くのフレンズ達に、逸早い情報を送る為の綱渡し役としても活躍している。


 その代表的なフレンズの一人が、このハト目ハト科リョコウバト属のリョコウバトである。頭部と上面が青灰色、下面がバラ色で脚が赤、嘴が黒と珍しい色合いの鳩である。巨大な群れを作り移動するのが特徴の渡り鳥であり、鳥類史上最大数を誇ったと云われていたが、人類の乱獲により絶滅した。その一因が食肉や飼料、羽毛の採取などにより数が激減。加え、リョコウバトは個体数とは裏腹に繁殖力が弱い為、その数を回復する事は難しく、更に本来の生息地である森林の開発が進む事となり、絶滅へと至ったのである。


 渡り鳥であるリョコウバトは、膨大な距離を飛び回る事が可能であり、数日に亘る飛翔力とそれを実現化する体力を持ち合わせている。


 性格は社交的でどんな相手にも丁寧に接してくれる心根の優しい子である。絶滅動物系フレンズであり、“かつて動物だったモノ”からの復元を成功させたアニマルガールの一人である。


 これは動物研究所副所長“カコ”の分野である。幼い頃、両親を亡くしたカコはその経験から“会えない悲しみ”を減らす為、絶滅種復元の研究に没頭した。その成果の一つが、このリョコウバトと言える。


 外見は元動物の色合いで、ツアーガイドの様な服装をしている。首元のリボンと、青の帽子が特徴的である。


「その通りですね。避難する際は、私が他のエリアまでご案内致しますよ」

「あら。それは助かりますわね」

「リョコウバトさん、ありがとう」

「いえいえ」


 そして、もう二人。

 キジ目キジ科クジャク属のシロクジャクとインドクジャクである。


 インドクジャクはクジャク属の模式種もしきしゅ。その白変種はくへんしゅがシロクジャクに当たる。頭頂に扇状の先端が青緑色の冠羽かんうが伸び、クジャク最大の特徴である上尾筒じょうびとうは約100~150枚から成り、尾羽基部おばねきぶの上面を被う。因みにこれは雄の特徴である。頭部が濃青色、体側面は青緑色、腹部は黒緑色の羽毛で被われ、目玉模様の独特な上尾筒を持つ。嘴の色彩は灰黄色で脚は灰褐色である。雌は全身が褐色で、他の部位の色合いも雄に比べ比較的地味であり、体長も一回り小さい。白化個体の色合いは全体的に白色で統一されている。


 自慢の飾り羽を広げると巨大な半円の形を作る。これは雄が雌にアピールする為の求愛行動の一つ。その美しい模様と容姿から、多くの地域で神聖視されている。


 鳥類であるが飛翔するのは苦手。危険を察知すると稀に飛翔する。昼行性であり、夜間は樹上で身を休める。


 二人共、自身の羽の美しさに自信を持っている。特にシロクジャクは毎日の手入れを欠かさない程、美意識が高く、仲間のクジャクからも『一番のおしゃれ好き』と言われている。シロクジャクはその美しさと性格から気品のある淑女の様な口調で喋る。クジャクもしとやかな性格をしており、誰とでも丁寧語で接する。


 外見は元動物の色合いを表す、学生服の様な服装をしている。Vネックベストに中のシャツを締める小さなリボンが首元で目立つ。元動物の特徴である冠羽は、同じ色合いでアホ毛の様に頭の上に立っており、上尾筒も顕在である。二人共、同種である為、似た様な容姿をしている。この点は、トキ達と同様と言える。


「そういえば、もう一つお土産話があるんです。それがですね……」


 リョコウバトが話を切り替えようとしたその時。さばくちほーの方面からアライさんとフェネックが三人に近付いてきた。声と共に、先行するアライさんがどたばたと迫ってくる。


「お前達、何を話してるんだ?」

「慌ただしい方ですわね」

「こんにちは」

「こんにちは、なのだ!」


 クジャクの挨拶に、元気一杯で答えるアライさん。フェネックがその場に追付くと、面々の姿を見て、顔馴染みに挨拶を済ませる。


「やぁやぁ、久しぶりだねー」

「フェネックさん、お久しぶりです」


 リョコウバトが答えた。


「フェネック、知り合いだったのか?」

「ちょっとした縁でねー」


 それ以外の面々は皆、初見である。


「アライさんなのだ」

「フェネックだよー」


 二人の挨拶の後、その場に居た残りの三人も同様に短い挨拶をする。


「リョコウバトです。ジャパリパークのガイドなら私にお任せ下さい!」

「シロクジャクですわ」

「クジャクです」


 一通りの礼儀を済ませると、移動を続ける二人が揃ってその美しさに見惚れていた。


「綺麗なのだ!!」

「おおー、凄いやー」


 少し照れながらも、自慢げにその羽を見せ、喜ぶシロクジャク。繊細で美しい白色の羽は、この林では余計に目立つのだ。


「あら、ありがとうですわ。自慢の羽ですもの。沢山見て下さいね」

「シロクジャクさんの羽はやはり、凄いですね。とても綺麗です」

「ふふっ。貴女に称賛されるのは特別ですわ。貴女の羽もとても綺麗ですわよ」

「そうだねー。お姉さんのも色鮮やかで良いと思うよー」

「とても立派なのだ!!」

「そ、そうですか…・・? 皆、ありがとう」

「綺麗と言うと、あいつの顔が思い浮かぶのだ……」


 アライさんの言う“あいつ”とは、紛れもなくジャパリパーク唯一無二の色合いを誇る赤色のフレンズ。その自慢げな表情がアライさんの脳裏を過る。


『(ドヤァ)』


「……。なんでもないのだ。それよりも、さっきの話を聞かせて欲しいのだ!」

「あっ、そうでしたね。えーっと……」


 アライさんとフェネックの合流により、逸れた話題。

 そして、話はリョコウバトの土産話へと戻る。



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