第42話 とき

 パカァーン!


 セルリアンが反応した時には、既にその形状は変化を始めていた。得意の跳躍でフレンズとセルリアンの間に入り、爪を立てたカラカル。それに続いて、サーバルも飛び跳ね、仲間であるフレンズを護る為に割って入るが……。


「うわぁ……」


 着地した瞬間。その場に静止して、頭を揺らしている。

 サーバルは聴覚に優れた動物である為、その能力はフレンズ化後も色濃く継承された。動物により聴き取れる周波数に差異がある為、仲間が特に意味なく発した音でも、相手にとっては“害”となる事があるのだ。


 よろめくサーバルを横目に、フレンズがセルリアンに追走されていた事に気付いた。


「あら……」

「あんたはそこで休んでなさいっ! ここは私が片付けるわ!!」

「うん……、頼むよ、カラカル……」


 奮戦するカラカル。

 慣れた様子で、次々と相手を消し去る。翼を揺らしてサーバルにフレンズが近付く頃には、既にその場に居た敵であるセルリアンは一体たりとも残ってはいなかった。


「ふぅ……。ま、こんなものね」

「むふふ。こんなに私のファンが居たなんて……」

「どこがよ!!」

「冗談よ……」


 フレンズの正体は、ペリカン目トキ科トキ属のトキである。


 動物としては、翼開長が約130cmと大きな翼を持ち、全体の色合いが特徴的な鳥類である。体色は白、足は暗赤色で、顔の皮膚が裸出らしゅつした部分が赤、細長い嘴が黒で、先端が赤色となっている。虹彩は橙色。幼鳥時は全身が灰色で、頭部が黄色。成長と共に、色合いが大きく変化する鳥である。形態としては、飛翔時に首を伸ばしたまま飛び、脚の先が尾羽おばねから出ない事などが特徴的である。


 鳴き声は「ターァターァ」と濁った声であり、群れてなくとうるさい。


 性格は至って温厚。後天的にフレンズになった事を自覚しており、元々は仲間を探して飛び回っていた。サーバルやカラカル、ギンギツネ、シロサイ、ルルなどとは特に仲が良い。同種であるショウジョウトキとは腐れ縁でよく行動を共にしている。


 歌が大好きなフレンズで、よく、その時の感情を歌に乗せて表現している。しかし、本人の熱い思いとは裏腹に、その歌声はあまりにも酷く、極めて音痴なのである。よく歌唱力について周りのフレンズから指摘を受けるが、鋼メンタルで受け流している。ショウジョウトキ同様に、音響兵器レベルである。しかし、心の底ではどうにかしたいと思っているとか……。


 セルリアンにも同様以上の効果があり、フレンズであれば意志疎通が出来る為に阻止する事が可能だが、それを成す手段が無い為に、最終手段として攻撃を行ってくるのだ。


 外見はトキの特徴である、主に白色と朱鷺色ときいろの二色で構成されている。袖に朱色のフリフリが付いた白の長袖に、朱色のミニスカート、同色のタイツを着用。首元にフサフサとしたファーが一周し、尻尾も目立つ。髪型は白髪で、切り揃えられた前髪に、伸びた長いもみ上げ。もみ上げ部分は全体が赤で先が黒と変色しており、動物のトキの頭部を思わせる色合いをしている。目の色は元動物同様に橙色である。


「トキィ……、久しぶりだね……」


 未だ、その歌声の影響が残るサーバル。


「そうね。まだ、数日しか経っていないかしら」

「それって、久しぶりって言わないんじゃないの……?」


 カラカルが冷静に指摘する。

 それを流して、調子の戻ったサーバルが自慢げにトキに例の物体の事を語る。


「それよりも、トキ! 聞いてよ、聞いてよ。すごいのがあったんだよ!!」

「?」

「こっち、こっちー!」


 そして、三人はサンドスターの塊の元へと移動した。トキはその謎の物体を見ると、以前のカルカルと同じ様に見惚れて、質問する。


「で、これは何? 確かに、凄く綺麗だけど……」

「でしょー? えへへ……」


 サーバルはまるで自分のものの様に自慢し、照れる。その様子に、呆れ顔を浮かべながらカラカルは答える。


「私達にも分からないのよね……、それが」

「それでね、この中に……、ほら!!」


 物体の周りを少し歩き、透明部になった中をサーバルが覗く。それを見て、同様にトキが覗くと。


「フレンズが居るんだよ!! この子、何のフレンズなのかなー?」

「――!! ほんとだ……。鳥のフレンズみたいね。不思議だわ……」


 結晶の中で眠るフレンズに、初めて見る現象。驚いた様子で、トキとカラカルが顔を合わせた。サーバルはその二人をよそに、新しいフレンズへの興味で喜びの感情に満たされていたのだ。

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