第43話 きざし

「カラカルが言うには、“眠ってる”んだって!!」

「あくまで、推測よ。本当に眠ってるかどうかなんて、本人でなければ分からないでしょ?」

「けど、死んでる様には見えないわ。この子、起きないの?」

「駄目だったんだよー! ノックしても、大きな声で呼び掛けても、全く反応しなかったんだよ!!」

「なら、私の歌声で……」


 その流れに敏感に反応すると、二人はこぞって拒否反応を見せた。


「そ……、それは……、いいかな~。あはは……」

「やめて。また、セルリアンが湧いてくるから……」

「……。私の歌……、セルリアンにも嫌われていたなんて……」

「わ、私は好きだなー……。トキの歌! ちょっとだけ、耳がちぎれそうになる感じがするけど、トキの、歌への熱い思いが伝わってくるよ!!」

「サーバル……。ありがとう。それじゃあ、一曲」


「え?」

「ちょっと、待って!」


「~~~♪゛ ~~~♪゛」


 この地点からのトキの歌声は、いつにも増してよく響く。

 高山麓まで行き届き、木からは一斉に鳥達が飛び立った。


 そして、間近で聴いたサーバルとカラカルは、地面にうつ伏せに倒れ込み、静かに眠りについたのであった。


「~~♪゛ ~~♪゛」

「「――――」」


 歌い終えたトキの様子はいつも以上に輝いていた。


「私の歌どうだった……?」


 すっと目を開き、サーバル達の様子を見ると……。

 そこには、行儀良く倒れた案山子が二つ、地面に放置されていた。


「サーバルッ……!! カラカルまで……。私の歌って、やっぱり……」


 そして、サーバル達が目覚めるまでに数十分の時間を要したのであった。


「すごいよー……。まだ、頭がフワフワしてるなんて……」

「あの時と一緒だわ……。最悪の寝起きね……」


 カラカルが言う“あの時”とは、嘗てギンギツネの発明品である『コンコントウZ』を間違えて飲み、気絶した時のエピソードの事を指している。


「トキ……、場所を考えて歌いなさいよ……。駄目って言ってるわけじゃないんだから……」

「ごめんなさい。私やっぱり……、歌の才能ないみたい……」

「そんなことないよ! トキは歌が大好きだって私、知ってるもん!! きっと、いつか上手くなるよ!!」

「サーバル……」

「そ、そうね……。物事は継続が大事だって言うものね。時々だったら、このサーバルがお客役を引き受けてくれるわよ」

「え?」

「カラカル……。うん! 私、折れずに歌い続けるわ」


 トキの歌への情熱が戻った所で、カラカルが本来の話を思い出し、話題を戻す。


「……それで、だけど。サーバルがいつものやつでね……」

「んー……、何となく予想がつくわ。この子の面倒をみてあげようって話じゃないかしら?」

「流石、トキ。察しがいいわね。ずばり、そういうわけよ」

「どうかな? トキ。きっと、この子も不安だと思うんだよー! フレンズ助けだと思って」

「私は構わないわよ。どうせ、暇だもの」

「やったー!!」


「もしかしたらこの現象、ギンギツネなら解るかもしれないわね」

「ギンギツネなら、ゆきやまちほーの隠れ家に居るわよ。それにこの子がすぐに起きる保証なんてないから、誰かがギンギツネを呼んでくるのはどうかしら?」


 カラカルとトキが話を進めていく。

 カラカルが言う“誰かが”に当然、サーバルは含まれていない。単独で活動させた時には、必ずトラブルを持ち込んでくるのだ。“トラブルメーカー”の名は伊達じゃない。その事を踏まえ、ギンギツネの元へと向かう役目を、二人の内、どちらかが請け負う羽目となる。


「私の方が適任かもね。障害なく飛んでいけるでしょうし」

「分かったわ。じゃあ、その役目はトキに任せる。頼んだわよ」

「トキ、頑張ってね!!」

「うん。二人とも、行ってくるわ」

「ばいばーい!!」

「あ、くれぐれも歌いながら戻らないようにね」

「わ、分かってるわよ……」


 こうして、トキはこの現象の解明の鍵となる可能性のあるギンギツネの元へと飛び立っていった。そして、サーバル達はこの結晶内で眠るフレンズのお世話をサーバルの意向により、買って出たのだ。


 奇遇にもそのフレンズにとって、一番近しい存在であった彼女達との再会が刻一刻と近付いて行く。それは少しだけ残酷な運命の一つであるものと知らず、サーバルは今か今かと、彼女の起床を待ち望んでいた。




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