第41話 さーばる
「けど、この結晶、外からは壊せないみたいだよ? ほらぁ!!」
そう言うと、サーバルは又しても自慢の爪で攻撃し、同じ様に弾かれてしまう。
「うーん……。中の子に呼び掛けてみるとか?」
「流石、カラカル!! 名案だよっ!!」
すると、すぐに行動に移し、サーバルはその硬い物質の表面をコツコツと叩いて呼び掛けた。
「おーーーいっ!! 起きてーーーーー!!!!」
しかし、結晶の中で眠るフレンズはピクリとも反応する事はなく、物体自体にも何の変化も起こらない。
「…………。駄目みたいね」
「カラカル、どうしよう……。この子、ほっとけないよ……」
「始まったわね。サーバルのお人好しが。……はぁ。まぁ、眠ってるみたいだし、いつか起きるんじゃないかしら」
「じゃあ、その時まで待っててあげようよ!!」
「本気!? いつ起きるかなんて分からないでしょ?」
「多分、この子困ってるんだよ。ほら、よく見たら泣いてるみたいだし……、可哀想だよっ!」
そう言われ、カラカルも結晶内部を覗き込む。サーバルの述べた通り、フレンズの瞑った目元には小さな雫がある様にも見て取れた。そして、もう一つ判明した事がある。それは頭部に付いた小さな羽だ。これは鳥のフレンズである事の証明。内部で眠るフレンズは鳥類である事が明白化したのだ。
しかし、カラカルには未だ理解出来ない事がある。それは言わずと知れた、この結晶である。本来、動物にサンドスターの一部が触れる事により、アニマルガール=通称“フレンズ”へと変貌を遂げる訳なのだが、この様な結晶化を目にするのは、彼女達にとって初めて現象という訳だ。そして、内部には既にフレンズ化した姿のフレンズが眠っているという矛盾。それは即ち、サーバルが見たサンドスターの塔が発生する事前に、この目の前のフレンズは存在していた事が推測出来る訳だ。
「断っても、聞かないんでしょ……。好きにしたらいいわ」
「ありがとう、カラカル!! えへへ……」
「ちょっと、くっつかないでよ!!」
普段から積極的にフレンズ探しを行うサーバル。
そして、楽しい事や、面白い事、皆の笑顔が大好きなサーバルがこれを見逃す訳がない。こうなる事は、長い付き合いであるカラカルには既にお見通しであったのだ。嫌々という訳でもなく、カラカルは何だかんだ付き合いの良い性格である。そして、そんな場には常にサーバルの姿がある。二人の仲の良さが窺えた一面であった。
そんな会話の最中、サーバルの長い耳がピクリと動いた。そして、不快感を持つ様子を浮かべた。少し遅れてカラカルもその音に反応し、苦そうな表情をする。
「~~~♪゛ ~~♪゛」
「この魂を持っていかれそうな音って……」
「それだけならいいわ。サーバル、よく見てみなさいよ……」
「んー……? せ、セルリアンッ!?」
「トキ……、随分と、多いファンを連れている様ね……」
ふぁさふぁさと飛行し、上機嫌に歌う一人のフレンズ。その後ろから、まるで怒っているかの様に、追走してくるセルリアンが、同時にサーバル達に迫ってきた。
「トキィイィィィ……、うし……ろぉ……っ!!」
近付くにつれ、その熱唱が音から音響兵器へと変わっていく。サーバルが必死に声を張る様子に気付き、フレンズが歌うのを止める。
すると、フレンズの後背からセルリアン達が一気に襲い掛かった。
「――――――!」
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