第40話 ねむり

 サーバル曰く、大きく吹き出したサンドスターの塔。

 それを見るや否や、サーバルはカラカルを引っ張り、ゆきやまちほーでギンギツネ達と別れ、一直線にこの地点へと向かってきた。


 そして、今に至るのだ。


「サーバル、本当にそんなことが起こったの?」

「本当だよー。すっごーく、大きな光りがね、空を突き抜けたんだよー」

「ふぅーん……。まぁ、いいわ。あんたのおかしな行動は、いつものことだもの」

「おかしくないよぅ!!」


 普段と変わらぬ会話を繰り広げながら、体力を回復していく二人。見渡した風景に少しの違和感を持ち、カラカルが感想を述べる。


「サーバル、何かおかしくない……?」

「んー? 何が?」

「なんだか、いつもより暗いというか……、何というか……」

「私達、夜行性だからねっ! 少し眠いだけだよ!」

「それ、関係あるのかしら……。まぁ、けど、気のせいよね……」

「そうだよ、ちょっと眠いだけ。カラカルも心配性だなー」

「あんたが能天気なだけでしょ!!」

「えへへ……」

「褒めてないから……」


「そろそろ出発しようかー!!」

「……はぁ。そうね」


 程好く休憩を取り、再び、目的の地点へと向かう事とする。二人の現在地からでも、サンドスターの塊はブロック状に無秩序に重なり合い、今にも爆発しそうな雰囲気を醸し出していた。


 そこから更に、回る様に登って行く二人。

 サーバルは、このサンドスターの山で吹き出した事は確認済みであったが、詳細な地点が判明していない為に、この様な回りくどい方法で登山を行っているのだ。この知恵は勿論、サーバルのものではなく、ギンギツネの助言である。


 既に、山の七合目辺りまで到達している。

 未だその不確定な情報に躍らされ、随行しているカラカルの嫌気が差し始めたちょうど、その時。サーバルが歓喜の声を上げた。


「カラカル!!!! あったよー!!」

「え???」


 サーバルが指差す前方には、明らかに山の一部ではない、異彩を放つサンドスターの結晶が煌びやかに咲いていた。


「――――!? なによ……、これ」

「すごいねー!! これ、なにー!?」


 サーバルがその結晶に接近すると、興味津々にその周りを一周する。カラカルも見惚れながら、明らかに浮いたその物体を考察する。


 サーバル達より一回り以上大きな、華の様なサンドスターの結晶が、山面やまづらに一つ、咲き誇る。


 怪しい物体に、カラカルが慎重になっていたその時、そんな事はお構いなしと、サーバルが自慢の爪で攻撃した。


「みゃみゃみゃみゃ、みゃー!!」


 唖然とするカラカル。

 キンキンと甲高い音と共に、弾かれるサーバルの手。結晶に変化はなく、すぐにカラカルがサーバルを抑え込んだ。


「なにやってるの!? あんた、やっぱりバカじゃないの?」

「ひどーい! バカじゃないよぅ!!」

「何か判らないものに、いきなり攻撃するなんて、バカ以外の何者でもないわよ」

「違うよ! 中の子を助けてあげようと思ったんだよ!!」

「中の子……?」


 カラカルがその物体をもう一度、見詰める。

 先程の場所から覗く事が出来なかった内部には、一つの物影が存在した。


「うそ……」

「ね?」


 結晶の中には、まるで眠る様にして縮こまる一人のフレンズの姿があったのだ。

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