第32話 きょうい
「さっきはアライさんの意見を否定したんだけど、私も大きな見落としをしていたわ」
「どういう意味なのだ?」
「これが地上戦にのみ限れば、囮役に大きなリスクを背負わせることになる。だけども……」
オオカミは鳥綱の二人の方をじっと見つめた。それに応えて二人が頭をコクリとする。
「オーケー! オーダーは必ずやり遂げるわ」
「ショウジョウトキに任せて下さい(ドヤァ)」
「助かる……。これでリスクを少なくできる……。ショウジョウトキはヘラジカを運んでユメリアン上空へと飛行。その護衛にハクトウワシも
「了解したわ」
「分かりました」
「その後、ショウジョウトキはユメリアンに向かってヘラジカを放り投げてほしい」
「落とせばいいのですね(ドヤァ)」
「そうなるね。ハクトウワシは“もしも”の時のために、空中で待機してて。そこはあなたの経験で、独断に動いてもらえる?」
「オーケーよ」
「オオカミ、私は何をすればいい?」
「うん。降下した勢いのまま、一撃であの石を砕いてくれれば幸いなんだけども……」
「なるほど。随分と分かりやすい。大将の首を狙うということか」
ヘラジカの理解にオオカミが頷く。
「周りの小型セルリアン達は私、リムガゼル、アライさんで引き付けながら排除していくわ。けど、前進し過ぎると恐らく、ユメリアンの攻撃範囲に入ってしまうから注意して戦闘を行うこと」
「分かったのだ!」
「りょ……、了解ですっ!」
「この作戦にはスピードが重視されるわ。ユメリアンが地上の私達に引き付けられ過ぎると、降下場所の立地条件が悪くなる。いかに、ヘラジカを速やかに落とせるかがポイントになるかしら。そして、恐らくは一度きりの作戦。みんな、分かってると思うけど、最初から本気で頼むわね」
一同の顔が真剣な表情へと変わる。
「じゃあ、始めようか」
アライさん、オオカミ、リムガゼルはバラバラに別れ、ユメリアンとその周囲のセルリアンに最も近い茂みに身を隠す。その間にショウジョウトキはヘラジカを抱えて翼を羽ばたき始めた。
「行きますよー」
「うん。頼むよ」
「フォロミー、いよいよね」
二人とヘラジカが地上を飛び立つ。それを見たオオカミが茂みから身を出すと、続く様にアライさんとリムガゼルもセルリアン達と対面する。
「――――――!!!」
小型セルリアンの存在はそこまでの脅威とはならないが、奥のユメリアンの攻撃に警戒しながらの戦闘は常に緊張状態にあった。
「い、行きますよっ!」
普段は弱気なリムガゼルの眼光が、鋭さを増す。アライさんはその様子を横から覗く。槍術は以前見た、ラビラビやルルに遅れをとらないものであった。
「やぁーっ!」
パリーン!
魚型セルリアンを一突きで捉え、戦場に最初の光りが舞った。
「アライさん、続くよ!!」
最も距離の離れたオオカミがアライさんに声を飛ばした。
右翼にオオカミ、中央にリムガゼル、左翼にアライさんの配置となる。
そして、この三人の目的は小型セルリアンを
「分かっているのだ!」
二人も爪で応戦する。オオカミは素早い動きで、三日月形セルリアンの攻撃をかわし、振りの速い爪で仕留める。アライさんも壁型セルリアンに対し、決死に爪を立て攻撃する。
「これで……、どうなのだ!」
最後に一撃をお見舞いすると、見慣れた光りがピンクの世界を更に幻想的なものへと変えた。夢の中で、六人はその脅威と相対している
「――――――!!!」
そして、遂にユメリアンが三人の存在を視界に捉えた。
「くっ……。ずいぶんと早いわね」
相手の攻撃を避けながら、オオカミに焦りの表情が浮かんでいる。残りの二人もユメリアンの変化に気付きつつも、セルリアンに足止めをくらっていた。
最大の脅威であるユメリアンを前に、三人に危機が迫ろうとしていた。
その時。
「オオカミ!!」
ハクトウワシが声を上げる。
ユメリアン上空にショウジョウトキとヘラジカが到着していた。
「頼みますよ(ドヤァ)」
「分かっている。野生解放で一撃で仕留める!!」
地上のオオカミは、手前の小型セルリアンを倒した後。
皆の配置が完璧な状態になった所で、上空の三人に合図を出した。
「いいわよー!」
「ヘラジカ。ゴー!!」
オオカミの合図を確認後、ハクトウワシの掛け声でショウジョウトキがヘラジカを降下させた。
ヘラジカの眼がギラリと光る。自身の武器を手に、勢いよくユメリアンへと向かい落下していく。それと同時にハクトウワシもその場から飛翔した。
そして、ヘラジカが自身の武器を振り下ろす。
「やあああああああ!!!!!!」
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