第33話 ひらめき

 ドーーーーッン!


 衝撃音の後、ユメリアンが怯む。

 突出部に、ヘラジカの強力な一撃が放たれた。


 正しく、“森の王”に相応しき重みのある一撃であった。ヘラジカは地上へと着地する。


「どうだ?」


 皆の意識が一瞬、ユメリアンへと集中する。

 突出部の破壊には成功しており、敵に多大なダメージを与えていた。


 しかし。

 ユメリアンは静止した後、攻撃された方向へ振り返ろうと動いていた。


 その状態を近くで見ていたハクトウワシがすぐに声を上げる。


「石は確認できたわっ! だけど、後、一押し足りてないっ!!」


 ユメリアンが背をオオカミの方へと回す。それは同時に、地上へ降りたヘラジカを捉える事と同義となる。オオカミの視線にはユメリアンの弱点である石が露わになっていた。出っ張りは、ヘラジカの攻撃で削られており、石には小さなヒビが入っている。ほんの少し威力が足りなかったのだ。


 オオカミは目の前の好機に目がくらむ。


「……っ! 駄目だわ」


 小型セルリアンを相手にしながら思考するが、仲間の危険と天秤に掛け冷静さを取り戻した。


「ヘラジカ、くるです!!」


 ショウジョウトキが上空からヘラジカへと声を送る。


「分かってるよ!!」


 ヘラジカは野生解放をしたまま武器を構えた。

 ユメリアンが地上のヘラジカを視界で捉えると、その大きなクモの足を振り下ろし攻撃してくる。


 そして、再び衝突音がその場に響いた。


「ヘラジカ!!」

「「「「「――――!!!!」」」」」


 オオカミが叫ぶ。

 残りの一同は唖然とし、その場の空気が凍りつく。

 

 一瞬の静寂の後。

 煙の中には未だそのフレンズの姿が影として残っていた。


「私が……っ!」


 ハクトウワシがすぐにユメリアンの方へと飛翔し、接近する。


「ハクトウワシ!! ヘラジカを!」

「ノープロブレム!! 私が少しの間、足止めをするわ。その間に!!」


 ハクトウワシがその正義感から、敵との足止めをかってでる。

 しかし、オオカミにはそんな手立ては何処にも有りはしなかった。


「どうすればいいの……」


 ヘラジカの所へ行こうにも小型セルリアンの壁に阻まれ、時間が掛かる。


 すると、行き詰ったオオカミの様子を見て、リムガゼルとアライさんが声を飛ばした。


「お、落ち着いて下さいっ! 私達も付いてますからっ!!」

「そうなのだ……、さっきとは……、状況が変わったはずなのだっ!」

「あ、あり……。?」


 二人は自らも攻防を繰り返しながら、連携を取りつつ、オオカミに助言を送った。本人は無意識であったが、それはオオカミのひらめきに大きな手がかりを与えていたのだ。


「状況の変化ね。なるほど。ありがとう、アライさん!!」

「???」


 接近してきた小型セルリアンを撃退する役割の三人は、確実に相手勢力の数を減らしており、先程までと比べるとユメリアンへの突破は格段に容易いものへと変動していた。しかし、それでも単独での突破は困難である。だが、現状はヘラジカが地上に居り、小型セルリアンの数も減少している為、三人が散らばる必要性が少ない。であるならば、答えは明白。それをオオカミは二人へと告げた。


「二人とも、一点突破よ!!!!」

「え、え??」

「うぇ?」

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