第31話 せんぜん

「これは……」


 オオカミが言葉をこぼす。


「とても……、大きいですね……」


 リムガゼルが続けて、意中の感想を完結させた。この場に隠れる誰しもが同様の思いを抱いている。


 ユメリアンから最も近い茂みに隠れ、相手の動きを観察しているアライさん一行。驚きは、ユメリアンの大きさだけではなかった。まずは、その形態。体はキノコの形状をしており、それにクモの足が生えた形で佇立ちょりつする様に歩行している。キノコで言う所のの中心部に目が付いており、足の他に傘と柄の境界線部にもクモの様な足が付いている。加えて、目がある柄の両端からは、手の役割を果たす触手が二本生えていた。そして、注目すべき大きさは、フレンズ達の約五倍を誇る。巨体である為に動きはにぶいが、まるでそれを取り囲むかの様に、小さなセルリアンが周りに点々と散らばっている。


「大型セリルアンということか……」

「周りにも、小さいのが沢山居るわね」


 戦闘慣れしたヘラジカ、ハクトウワシも今ばかりは突っ込む事を止め、策をこうずる。今回の戦闘が困難になる事は、誰しもが安易に想像出来る状況にあったのだ。唯一の救いとしては、この場のフレンズ達が戦闘に置いて、バランスがとれているという点だ。


「石はどこにあるのだ……」

「うーん、どうにも見えそうにないね」


 アライさんとオオカミはまず、敵の急所である“石”の位置を目で探す。


「ショウジョウトキ、どうなのだ?」

「わかりません!(ドヤァ)」

「こ、困りましたね……」

「しかし、あれもセルリアンであるならば、必ず石はあるはずだわ」

「そうね、オオカミ。私がまず飛行して周りの状況を見てきましょうか?」

「そうだね。出来ることなら、帰還時にもこちらの位置がばれない様にしてくれるかな?」

「了解したわ」


 ハクトウワシは自らの役割を理解し、偵察活動を開始した。アライさん達が潜む茂みから少し離れて飛び立ち上昇。その後、ユメリアン上空へと辿り着き、飛翔、降下を繰り返している。


「石の位置さえ分かれば、戦い様もあるというもの」

「ヘラジカさんっ! そ、そうですよね……。しかし、あれだけのセルリアンにユメリアンまで……、どうしたら……」

「オオカミ、お前の知恵を貸してほしいのだ」

「分かっているよ。言わずとも、今も考えているところさ」


 小型セルリアン達はふわふわと浮遊しながら、その場をゆっくりと巡回していた。


「これだけの数なら、片方が気を引いて、もう片方で突撃するというのはどうなのだ?」


 アライさんは石が見付かった事を前提として案を上げた。これはアライさんの中でも記憶に新しい、橋の上での戦闘で行った作戦の一つだ。相手のセルリアンが一体であれば、数で押す原始的な戦術ではあるが、大いに有効的な作戦である。


 しかし。


「それは無理そうかな。まず、周りのセルリアンの対処が必須になるわ」


 オオカミは思考しながら、それに答えた。

 ユメリアンに辿り着くまでに周囲の小型セルリアンに足を止められ、目的の遂行を果たす事が困難になる。そして、囮を担うグループに大きなリスクを背負わせる事になるのだ。


「考えがまとまらないのは分かる。だが、私たちは危険は承知の上で戦うんだ。少しばかりのリスクなら排除してもらって構わない。この作戦が仮に、失敗したとしても、誰もオオカミを恨んだりはしないさ」

「ヘラジカ……」


 仲間の危険を思うばかりに躊躇ちゅうちょしていたオオカミの背を押す様にして、ヘラジカが一声掛けた。それに続けとばかりに他の皆も励ましの一声。


「そ、そうですよ、オオカミさん! 私も恨みませんよー」

「アライさんは、こんなところで消えないのだ」

「私も、もっと綺麗な赤を手にするまでは消えられないです(ドヤァ)」

「みんな……。うん。ありがとう。何とか考えてみよう」


 オオカミは一つ、踏ん切りをつけて再び作戦を練る。その間に、先程偵察に向かったハクトウワシが回りくどく遠回りをして帰還してくる。


「まず、周りにフレンズは居なかった。茂みが周囲にあるだけだわ。それと、ユメリアン。体の表面上に石らしき物は見当たらなかったわ。強いて言うなら、体? の背面部分。ちょうど、目の後ろになるかしら? 突出した箇所が一つ見られたわ」


 すると、リムガゼルが自身の情報を仲間に共有する。


「き、聞いたことがあります。サンドスターローを多く摂取するセルリアンは石を内部に取り込めるとか……、なんとか……」

「オーマイガー……。そんなことが可能なんて」

「ならば、その一点を全力で叩くのみだ」

「ヘラジカの言う通り、それに賭けるしかなさそうだわ」


 冷や汗を掻きながらも、笑顔を浮かべるオオカミだったが、その表情に余裕の色は混ざっていなかった。


「オオカミ、作戦は決まったのか?」

「なんとかね。先に、改めてみんなの名前を聞いておいていいかな?」


「私は、タイリクオオカミのオオカミよ」

「色々と呼び名はあるが、ヘラジカだ!」

「私はショウジョウトキよ(ドヤァ)」

「リ、リムガゼルです……」

「正義の使者、キャプテン・ハクトウワシ!!」

「アライさんなのだ!」

「……うん。それじゃあ、みんな作戦を伝えるよ。犠牲は無しでいきたいから、よろしく頼むわね」


 一同は顔を合わせて小さく頷く。

 こうして、オオカミ発案のユメリアン電撃作戦が今、開始され様としていた。

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