第23話 すなねこ

 光りに包まれた一行の前に現れた一人は、感動した後、急に冷めて一言。


「でもまぁ、騒ぐほどでもないか……」

「どっちなのだっ!」

「やぁ、スナネコ。今日はどうしたんだい?」

「やっほー! スナネコ」

「ラビラビにルル。砂嵐から逃げていたら、ちょうど、綺麗な光りが見えたので、向かってきたのです」


 そこに居たのはネコ目ネコ科ネコ属のスナネコである。

 一定の大州たいしゅうの砂漠に分布する、小型の野生ネコ科動物の一種で、名前の通り砂漠地帯に適応した動物である為、フレンズ化後もさばくちほーを好み、生息している。


 スナネコは砂を掘る習性を活かし、穴倉を造りそこを住処とし、活動を行っている。部位により毛が長かったり短かったりするのは、砂漠に適応する為の進化の一部である。代表例としては、大きな耳を護る内側の白い毛と足裏の長い毛である。覆われる両方の毛は、前者はラクダの睫毛と同様に砂の侵入を防ぐ為のもの、後者は暑い砂漠での地面を踏む為、皮膚の火傷を防ぐ役割を果たしている。


 性格は熱しやすく冷めやすい。これは元動物の名残と言える。本人に自覚は無いが、胸中を包み隠さず物言う為に、長く付き合いがないと“尖った性格”だと勘違いされる事がある。


 外見は全体的に黄褐色の色合いで、灰褐色の線が模様として部分部分に走っている。腰にリボンのあるスカート、白色のノースリーブシャツを着て、蝶ネクタイを締めている。眼は琥珀色である。


 本来は夜行性であるスナネコだが、フレンズ化の影響で日中に活動する事が多々ある為、現在の様な状況が生まれているのだ。


「あはは、それは災難だったね」

「それよりも、さっきの光りは、なんなのですか?」

「ああー、これねっ! 皆でセルリアンの大群を倒したんだよっ!」


 会話が進んだ頃には、セルリアン達が発した光りは既に消え、常時の見慣れた風景に戻っていた。


「おおー! それは凄いですね。お疲れでしょう」


 ズバババババババババッ!!

 スナネコはアライさんに向けて一気に砂を浴びせた。


「ぎゃあああ。何をするのだっ!」

「アライさん、何か悪いことでもしたんじゃないのー?」

「違うよ、フェネック。スナネコの砂かけは回復効果があるんだ」


 ラビラビが二人の誤解を解く。


「おおー、確かに、見る見るうちに回復していくのだっ!」


 スナネコは、続いてフェネックと残りの二人にも砂を浴びせた。


「なるほどー、見えはしないけどねー」

「スナネコはめんどくさがって説明しないから、よく誤解が生まれるんだよ。根は勿論、良い子なんだ」

「そうそう、最初はあたしもかけられたなー。なんだこいつー! って思ったよ。 あはは……」

「ぼくは悪いことはしないのです」

「そうだ。二人はこの後どうするんだい? セルリアンも倒したことだし、オアシス・ワンに戻って……」


 ラビラビの提案を遮る様にアライさんが声を発する。


「このまま上へと進むのだ。せっかく中心部に来たんだから、引き返すのはめんどくさいのだ」

「そうだねー。一刻も早く向かいたいしねー。大分、時間掛けちゃってるから」

「しかし……。砂漠の夜は冷え込むよ。出来ることなら慣れてる子が傍に居た方が……」


 考えるラビラビの視線の先には偶然出くわしたスナネコの姿がある。ほけーっと見詰めるその表情は何を考えているのか想像もつかない。


「スナネコ、この後、どうするの?」

「ぼくは穴倉に戻ります。特に用事がないので。それに今日はお昼に活動しましたから、夜は眠ります……。ほあー……」


 欠伸をするスナネコ。都合の良い案内人を見付けたラビラビが一つ頷く。


「うん。スナネコ、今日は二人を泊めてやってよ。オアシス・ワンを救ってくれた戦友を頼むよ」

「勿論、大丈夫です。では、行きましょう。日が落ちるのはすぐなので」


 スナネコの住処は中心部より更に上部にある為、アライさん達の進行方向の道中にあたる。さばくちほーの仲間達によって、案内役が次から次へと移り変わっていく。


 そして、出会いの後の別れ。戦友達との思い出はとても慌ただしいものであったが、アライさんとフェネックにとっては忘れられない大切な戦績せんせきとなった。記憶は楽しい事より、辛かった記憶の方が色濃く残るものなのだ。しかし、その辛さに耐えてこそ、今後の希望へと繋がるものと必ずなるだろう。


「じゃあ、またね、二人とも。出来ればまた、さばくちほーに顔を出してよ」

「そうだねっ! ラビラビと待ってるからね。戻ったら、この冒険の話聞かせてよっ!」

「当然なのだっ! フタコブラクダにも『ありがとう』と伝えてほしいのだ」

「いやいや、助かったよー。ほんとにありがとうー」

「分かったよ。スナネコ頼むね。じゃあね」

「ばいばーい!」


「はい。では、行きましょう」


 そして、その場を後にする三人。

 スナネコの回復があったとはいえ、激戦の疲労は蓄積されている。アライさんも今日ばかりは疲れた様子でスナネコの後を寡黙についていく。ラビラビとルルと別れ、三人は砂漠の夜を凌ぐ為、スナネコの穴倉へと向かう事となった。

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