第15話 おあしす 2

*


 ふわふわとした後、薄れた意識の中でアライさんは一つの水場を発見した。

 どうやら、先約が居る様だ。


「おいしー! 喉が渇いてちゃ動けないもんね! ごくごく……」

「あ、アライさんー、こっちにおいでよー」


 そこにはいつもの仲間、フェネックとサーバルが居る。

 二人は美味しそうに水を飲み、水辺の木陰で涼み、芝生の上で休憩している様子であった。


「今、行くのだー!!」


 アライさんは走ってその場へと向かう。

 すると、今まで関わった多くフレンズ達との会話が脳裏を過った。

 そう、まるで走馬灯の様に。


 しかし、そんな事はお構いなしに欲求を優先して水場へと駆ける。


「あれは、あれは、オアシスなのだ!!!!」


 満面の笑みを浮かべながら、切望したオアシスへと残り少ない体力を使って向かうアライさん。


「やっと、休憩出来るのだあああああ!!!!」


*


「何言ってるのさー、アライさんー」


 アライさんは頬をつねられた痛みを感じて強制的に起こされる。


「いた゛いのだああああああ」


 身を起こすと、そこには先程見ていた夢らしき場所と寸分変わらないさばくちほー内の水場が目の前にあった。フェネックはアライさんを木陰で涼ませ、様子を見ていたのである。


「ここは……?」


 すると、一人のフレンズがアライさんの前に現れる。


「ふわぁ……、起きたー?」


 そこに居たのはラクダ科ラクダ属のフタコブラクダであった。

もふもふとした茶色の体毛を持ち、砂の侵入を防ぐ長い睫毛まつげが特徴的なフレンズ。同様の理由で鼻の穴を閉じることが可能。最も目立つのはフレンズ化の影響により変化した、二つのこぶすなわち二つのシニョンである。


「アライさん、お姉さんが運んでくれたんだよー。感謝してよねー」

「た……、助かったのだ……」

「大丈夫だよー。それよりも、水だよー」

「そ、そうなのだ……」


 熱さが抜けたアライさんであったが、干乾びていた事は変わらない。

 言われてすぐに水中へと顔を突っ込んだ。


「ごくごくごくごく……、ぷはぁ~!」

「ごくごくごく」

「んっ……ごく」


 三人はさばくちほーで最も大きな水源。

 通称、オアシス・ワンに辿り着いた。

 さばくちほーを住処にするフレンズ達とっては重宝される場所であり、憩いの地となっている。


 周囲にはサボテンの花が点在しており、茶一色の風景に色を挿す。


 アライさんが水場周辺を見渡すと、他のフレンズ達も同様に休憩している様子が窺えた。


「さっきは全然居なかったのにねー」

「フレンズがこんなに居るのだ……」

「砂漠を住処にしてる皆にとっては、とっても重要な場所だからねー」


 オアシス・ワンはさばくちほーにとって心臓そのものと言っても過言ではない。さばくちほーを住処にするフレンズ達の命を繋ぎ止める役割を果たしているのだ。


「けど、二人はどうしてこんなところに?」


 フタコブラクダはアライさんを見て質問をする。

 どう見ても砂漠に適していないアライさんの様態から察する幾つかの事柄。

さばくちほーが住処でない事。何らかの理由でこの砂漠を通らなければいけない事。そして、二人が砂漠慣れしていない事。等々……。


「サンドスターの吹き出した方向へ向かっているのだ!!」

「そのための軌道修正をしてるのさー」


 すると、また新しいフレンズがオアシス・ワンの水辺から現れ、一声掛けてきた。


「それなら、私見たよ」

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