第二章

第14話 おあしす

 日照りの強い太陽光が二人を襲う。

 じゃんぐるちほーを抜けると、そこは正しく砂漠であった。

 てらてらとした足場の安定しない地面と、重く圧し掛かる空からの暑さ。正しく挟まれる形で体力をむしばんでいく極暑ごくしょの地。


 このちほーに適応しないフレンズは、好んでこの地を訪れる事は少ないという。


 人間の居住が困難と判断される地域アネクメネでは、人間同様に適性のないフレンズは当然、居住は厳しいものとなる。これは動物だった頃も踏まえて考えられる一説ではあるが、更にフレンズ化の影響も多大であるという。


 砂漠は降雨量に対して蒸発量が上回る地域を差すとも定義され、極端に水分が不足した地域といえる。そして、そんな地域で希少な水を得られる場所をオアシスという。


 そして、現在、二人もそのオアシスを目指していた。


「もう……、駄目なのだ……」

「えー、まださばくちほーに入ってからそんなに経ってないよ?」

「あ゛つ゛い゛の゛だ゛!!」


 アライさんの生気はさばくちほーの手厚い歓迎によって見る見る削られていき、現状、けアライさんに変化していた。動きもどこかぎこちない。


「フェネックは何で平気そうなのだ……」

「んー? なんでだろうー?」


 フェネックの本来、砂漠に生息している。

 全身の毛が柔らかく、厚く被われている為、気温の日較差にちかくさが激しい砂漠に適しているのだ。足裏も体毛で被われており、暑い砂地を歩行することも容易い。


 その為、アライさんとフェネックの体力消耗スピードはうさぎとかめ程違うのだ。


「し、死んでしまううう……」

「アライさんピンチだねー。焼きアライさんだー」

「笑いごとじゃないのだ……」


 見渡す限りの砂、砂、砂。

 進んでいるのかどうかすらも分からない、変わり映えしない風景に余計に体力が削られていく。


「もっと、水を飲んでおくべきだったのだ……」

「そうだねー。私も喉が渇いてきたよー」

「水場が遠いのだ……」

「んー、砂しかないねー。以前来た時はもっと楽に感じたけどなー」

「来る方向によって……、こんな違うとは……。さばくちほー……、やはり恐ろしいのだ……」


 生気と体力を削られ続けた挙句、アライさんから湯気が出始めた。


「おぉー、すごいやアライさん。蒸してるよ~」

「んんー……、……アツイノダ……」


 フェネックがアライさんに触れると常時の体温の二倍を上回る熱さになっていた。


「これじゃあ、アツイさんだねー」

「フェネック……、後は任せたのだ……」


 目をグルグルと回し、アライさんはその場に倒れた。


「ちょっとー、アライさんー? え……」


 唖然とするフェネックのもとに、さばくちほーに適したフレンズがのろのろと接近してきた。


「ねむねむ……。珍しいお客さんだねぇー。どうしたのー?」

「あー、助けてくれないかなー?」


 倒れた姿を見付けると、そのフレンズは自慢の体でアライさんを背負い運ぶ。


「うん。こっちだよー」

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