第13話 うんめい 2

「そのうんめい? というやつはどうやったら手に入るのだ?」

「理解出来ていませんよ、博士」

「知能が低いフレンズに説明するのは、やはり難しいものですね、助手」

「今、馬鹿にされたのは分かるのだ!!」

「アライさんー、そういうところだけは鋭いよね~」


 手洗いけものには無反応であったアライさん。

 しかし、ひねりのない言葉にはすぐに応答出来るのだ。


「アライさんの運命はその中にあるのですよ」


 博士はアライさんの胸先を差す。


「そして、その運命はあなた自身の手で動かすことが出来るのですよ」

「それは皆が持っているものなのか? フェネック」

「そうだねー、目には見えないけど、皆が別々に持っているものなんじゃないかな~?」

「そうなのです。そして、その運命によって今回の件、つまりはアライさんが新しいフレンズと出会えるかどうかが決まると言っても良いのですよ。この言葉には多くの多様性があるのです。しかし、アライさんの運命はアライさんのみの物なので、われわれがどうこう出来るものではないのですよ」

「んー、良く分からないのだ!」

「アライさん、難しいこと苦手だもんね~。けど、それのがアライさんっぽいや~」

「博士はアライさんに自分の手を信じろと言っているのですよ。自分で選んだ自分の進む道が大切なのです」


 ミミちゃん助手はより分かり易くアライさんに説明をする。

 コノハ博士より少しばかり長く付き合ったおかげで、相手のことを理解出来ているのだ。

 ジャパリパーク内には多くのフレンズがいる。

 その中でも相手によって理解の度合いが異なるのは、人間社会でも同じことだと言える。それは付き合いの長さや、相手への些細な配慮によってお互いに気付ける相違点なのだ。それでも相手の事を全て理解する事はほぼ不可能だ。しかし、少しでもその理解の幅を広げる事は出来る。それはフレンズ達にとっては、そう難しいことではないのかもしれない。何故なら、彼女等はジャパリパークに居るのだから。


「手には自信があるのだ! アライさんの時代がいよいよ来るということか……」

「ちょーっと、ズレてるけど、それでこそアライさんだよー」

「この猪突猛進ぶりはどうやら直らない様ですよ、博士」

「それがアライさんの良さかもしれないのです、助手」


 クスっと優しい笑みを浮かべるコノハ博士を見て、ミミちゃん助手も思わず和む。


 そうして、別れの地点へとやってきた。

 じゃんぐるちほーの上部。さばくちほーの手前である。


 ミミちゃん助手が現在地を説明する。


「この地図を見るのです。ここから斜めに下がるとこうざんがあります。このまま直進してさばくちほーに向かうのです。中心部に着いたら、上に向かってこはんを目指すとサンドスターが吹き出した方向に直進する道になるのですよ」

「分かったのだ」

「博士も助手も親切にありがとう~、助かったよー」

「アライさん、あなたの運命はあなた自身のものなのです。しかし、われわれと同様、フレンズの運命はこのジャパリパーク内にのみあるのです。新しいフレンズを連れて必ずジャパリ図書館に来るのですよ」

「われわれは二人の……、いや、三人の到着を待っているのです」


 二人に語るコノハ博士とミミちゃん助手の様子は、まるで過保護な親の様に親切そのものの姿であった。


「お土産を持って、必ず向かうのだ。ありがとうなのだ!」

「どもども、ありがとうー」


 コノハ博士とミミちゃん助手と別れると、再び二人は目的地へと前進していく。

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