第11話 きょうそん

「朝なのだ!!」


 一番早くに眠りについたアライさんが元気良く目覚まし代わりの一声を上げる。昨日の疲労は一睡し、完璧に消え去った模様。


 ジャパリパークの早朝。

 朝の澄んだ空気が森と一体化した一階から巡回する様に流れ込む。


「フェネック、起きるのだ!」

「んん~……」


 フェネックは未だ、尻尾が丸まり眠りについていた。普段から眠そうな表情を浮かべるフェネックであったが、この時だけは正真正銘眠っている。


「起きるのだ~!」

「んん~、アライさん~、うるさいよー」


 寝起きの悪いフェネックを揺さぶる様に起こしに掛かるアライさん。

 その時、置物二つの目が開く。


「どうも」

「どうも、です」

「うわぁ! ビックリしたのだ……」


 アライさんは後背こうはいからの一声にビクッとなる。

 三人は今まで起きていたかの様な寝起きの良さでテキパキとしている。それとは対照的な一人は未だ、反ボケ状態にある。


「助手、例の場所から朝食をお願いするのです」

「了解です。博士」


 コノハ博士の指示の後、ミミちゃん助手は一階へと下りると野外に出て何処かへと飛び去って行った。行き先は近くの隠れ家である。正確にはリコの隠れ家で、コノハ博士とミミちゃん助手が時折立ち寄っては、共に隠し貯めたジャパリまんを消費しに向かう事がある。


「どこに行ったのだ?」

「朝のジャパリまんを取りに向かったのです」


 どうやら、この研究所兼別荘では、ホテル体制に変わると一泊一食付きのサービスで提供されているらしい。どこまでも親切なフクロウ達である。


「助かるのだ」

「構いません。博士が困った時は、次は恩を返して欲しいのです。助手が困った時にも助けて欲しいのです。われわれは只、それだけの簡単な事をしているだけなのですよ」

「勿論なのだ。その時は、アライさんにおまかせなのだ!」


 ジャパリパークの生物群集内に置ける生物の捕食・被食関係は今や存在しない。それは生態ピラミッドの無い、新しい生態系である。


 コノハ博士は端的たんてきに、多くのフレンズにそれを伝えるのだ。


 一人のフレンズが困っていたら、そのフレンズを助けてあげる。

 それをする事により、助かったフレンズが、別の困っているフレンズを救うのだ。

 そうして、救われたフレンズは、更に別の困ったフレンズに手を差し伸べる。


 誰かにした親切は、必ず自分に返るのだ。


 この様にしてジャパリパーク内に輪が広がり、絆を深めていく。


 嘗て、ヒトが出来なかったこのしくみをフレンズ達は続けていく。


 これがフレンズ達にとっての共存きょうそんである。

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