第10話 はかせとじょしゅ 5

 床に広げられた紙はジャパリパークの園内マップであった。


「地図です」

「です。そして、現在地はここですね」


 さばんなちほーを下に見て、コノハ博士はじゃんぐるちほーの上部を指し示した。


「先程、セルリアンと遭遇そうぐうした場所がこの辺りです」


 ミミちゃん助手が補足説明を付け加える。

 示した地点は地図上のこうざんより更に左方。あんいん橋の奥の道に当たる。つまり、アライさんとフェネックは直線で進むつもりが、左に膨らむ様にカーブして向かっていた事になる。そして、渓谷を通過し、現在地に至った。


「うーん、遠回りしてる……?」

「どっちと言われても、分かり辛いのだ!」

「では、いくつかの地点を繋げて進んで行くと良いのですよ」

「それにはまず、軌道修正が必要なのです」

「必須です」


 コノハ博士とミミちゃん助手は同じ場所を指差す。


「「さばくちほー」」


「です。現在地から右に進むです」

「すぐに着くと思われます」

「なるほどー。何回かに目的地を別けて進んで行けば、確実に着けるってことだねー」

「あなたは理解が良いのですね」

「この手洗いけものとは違うのです」

「???」


 アライさんは辛辣しんらつな扱いを受けるが、それを理解出来ないアライさんはある意味得をした性格とも言える。突っ込みがこない間が、ミミちゃん助手をむずむずとさせた。


「何か言うのです!」

「多分、気付いてないと思うよー。ねぇー、アライさん」

「どうしたのだ?」


 コノハ博士が説明を再開する。


「うう゛ん。そして、さばくちほーから次の地点は上部のこはんを目指すのです」

「すると、サンドスターが放出した目的地へと直進する方向に修正出来るです」

「完璧ですね、助手」

「完璧です、博士」

「なるほどー」

「困った時は近くのフレンズに聞くと良いのですよ」

「ジャパリパークの皆はとても親切なのです、この助手の様に」

「てへ、です」


 流れる様な二人の説明に深く納得するフェネックと、眠気を抑えながら、どうにか聞き取るアライさん。


「今夜は冷え込むです。そこを使うと良いですよ」

「助かるのだ……。もう、眠いのだ……」

「博士と助手は起きてるのー?」

「われわれは夜行性ですが、今日は昼間に行動していたので共に眠ることとするのです」

「ちなみに、夜行性というのは、日中にも行動出来るのですよ。只、何等かの目的や生きる術、種族の習性などにより、夜間に行動しなければならなかった為に、夜行性になったけものが多いと云われているです。しかし、ジャパリパークではそれ等の理由が排除された為、行動時間を自由に選ぶことが出来るのですよ」

「なるほどー。外敵はセルリアンだけだもんねー」

「そういう訳です」

「では、また日が昇ったら活動を再開しましょう」

「ですね、博士」

「はいよー。アライさんは……、もう寝てるみたい」

「すぅ……すぅ……」


 そして、コノハ博士とミミちゃん助手は置物の様な体勢でまぶたを落とす。

 フェネックも寝床で丸くなり、アライさんにくっつくとお互いの体温で温め合いながら、二人は眠りについた。


 部屋は暗くなり、ジャパリパークは夜独特の雰囲気に包まれた。

 アライさん達の長い一日がこうして終わる。

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