第7話 はかせとじょしゅ 2

「どうして、そうなるのだ!」


 思わずツッコミを入れるアライさん。

 淡々たんたんと語るミミちゃん助手の表情が少しばかり驚く。


「アライさんにツッコミを入れられるとは、これ不覚です」

「どういう意味なのだ!」

「そう、このジャパリパーク内で、キャラ付けは必要不可欠。生き残るためのすべなのです」

「分かるようなー、分からないようなー?」

「ジャパリパークでネコ科のフレンズがどれだけ居ますか? 覚えられないでしょう。そう、これは被りによって個々のキャラが薄くなっているからなのです」


 ジャパリパーク内のネコ科のフレンズは数が多い。その為、すぐに名前の上がるライオン、トラ、ヒョウ、ジャガー、チーター、イエネコなどは救われているが、その影に隠れる多くのネコ科フレンズはぱっと名前が上がらないことが多いのである。


「けど、フクロウ科だと数は少ないんじゃないかなー?」

「確かに少ないです。ですが、数だけが問題でもないのです。例えば、リコ。あれは完全に博士と容姿がそっくりなのですよ」


 ミミちゃん助手の言うリコとは、モリコキンメフクロウの事を差している。


「しかし、彼女はあざとさと無邪気さを前面に出すことで、博士とは対比するキャラを確立しているのです」

「キャラ付けだったのか?」

「恐らくは」

「天然だと思うけどなー」


 どうこう語るうちに、三人は小川へと辿り着く。ひっそりと流れる小川周辺はまるで、森の休憩所を思わせる様な癒しの空間となっていた。


「「おおっー!」」


 川岸からせせらぎの音が耳に入る。

 アライさんとフェネックはキラキラと水面が光る小川に駆け寄り、口をつけた。


「ごくごく……。おいしいのだ!」

「さばんなちほーより全然、おいしいねー」

「当然です。ここは博士と助手の秘密の休憩所なのです。他言無用です」

「はいよー」

「分かっているのだ」

「そして、話を戻すのです」


 休憩中の三人は、再びキャラ付けの話題に戻る。


「“知恵の象徴しょうちょう”である博士とミミちゃんがこのキャラ戦争を勝ち抜くためには、方法は一つだと考えたのです。そう、コノハ博士が博士なら、ミミちゃんが助手になればいい、と賢い助手は考えました」

「どういうことなのだ?」

「数多くの色物フレンズに対抗する手段として、二人で一つ、つまりはセットで特徴である賢さをアピール出来る生存戦略に成功した、と言うことです」

「んー、つまり、アライさんと私みたいな感じなのかなー?」

「そうです。ペパプの様なものなのです」

「なんとなく分かったけど、そのキャラ付けというのは誰に対してしているのだ?」

「それは秘密です」

「???」

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