第2話 さくせん

「――――――!!!」


 セルリアンから飛び出た触手は二人に向かって襲い掛かってくる。二人は急ぎ茂みから出ると、ぴょんぴょことその場から逃亡する。


「ぎゃあああああ」

「アライさんさー、頼むよー……」

「ここは一時、撤退なのだっ!!」


 渓谷より手前の森林地まで走ると、セルリアンの気配は完全になくなっていた。二人は身を休めながら、再び話し合う。


「はぁ……はぁ……、どうすればいいのだ……」

「だから、慎重に、って言ったのにー……」

「どうにかして、あのセルリアンを倒さなければいけないのだ……」


 しかしながら、アライさんとフェネックの力だけではあの大きなセルリアンを倒す事は難しい。二人ともそれは理解していた。


 フェネックは見方を変えて、一つあんを思い付く。


「なら、セルリアン自体を移動させるっていうのはどうかなー?」

「そ、その手があったのだ! さっそく行ってみるのだ!!」


 アライさんが又しても突っ込もうとするのを抑えて、フェネックが腕をつかむ。


「そのまま行ってどうするのさー」

「セルリアンを移動させるのだ!」

「また、あの長いのに襲われて終わりだってー。アライさんがおとりになるなら別だけどねー」

「それは、無理なのだ……。何か作戦があるのか?」

「作戦……。そうだねぇ~……」


 フェネックが思い付いた作戦はとても簡単なものであった。

 二人は近くにある土を只管に掘り続けた。


「はぁ……はぁ……、まだ出ないのだ」

「アライさん、掘るペースが遅いよー」

「さばんなちほーの方が沢山あるのだ……」

「あ! あったよ~」


 フェネックが掘り出したものは、ジャパリまんであった。ジャパリまんはジャパリパークに存在するフレンズ達の食料である。


「さ、行くよー」


 ジャパリまんを三つ調達すると、それを持ったまま二人は再びセルリアンの居る渓谷の橋へと向かった。


 そして、ひそひそと先程の茂みに戻ってきた。


「これでセルリアンの気を引いて移動させるんだよー。その間に橋を渡るって作戦だねー」

「な、なるほど……。で、セルリアンはどう倒すのだ?」

「…………」

「…………」

「それは、強いフレンズが退治してくれるでしょ~」

「そ、そんなのは駄目なのだっ!!」

「アライさん、二人では無理だよー」

「納得いかないのだっ!」

「とりあえず、この作戦で移動させてみるよー」

「……、仕方ないのだ」


 セルリアンが別方向を向いている隙にフェネックは橋の正面へと忍び寄り、ジャパリまんを一つ置いて、再び茂みに身を隠した。


「振り返らないのだ……」

「アライさん、あそこに石でも投げてみるー?」

「そうするのだ」


 アライさんはジャパリまんに向かい小石を一つ投げてつけた。

 

 コロン……。

 すると、セルリアンが音に反応してこちら側へと振り返った。


「見てる! 見てるのだっ!」

「アライさん、静かにしてー」


 しかし、セルリアンはその後、特に目立った反応を見せることはなく、再び静止した状態が長く続いた。


「ジャパリまんが足りないかもしれないのだ。もぐもぐ……」

「あー、なんで食べてるのー」


 アライさんが持つ残り一つのジャパリまんをフェネックが取り上げ、同様に食べながらセルリアンを観察かんさつする。しかし、その後セルリアンが動きを見せることはなかった。


「もう待てないのだ! 勝負するのだっ!!」


 威勢よく声を上げたアライさんに反応し、触手が前回同様に襲い掛かる。


「――――――!!!」

「逃げるよ~」

「ぎゃあああああああ」


 こうして、二人はふりだしの森林地へと戻ってきたのである。


「いやぁ~、困ったねぇー」

「正々堂々、勝負するしかないのだ!」

「どう考えても勝てないよねー」


 すると、二人の話し合う様子を気にして、一人のフレンズが近付いてきた。


「大丈夫? お困りの様だねー」

「お姉さん、だあれー?」

「ヒグマだよー」


 そこに居たのは、ネコ目クマ科クマ属のヒグマであった。

 すると、アライさんはすぐに声を出し、助けを乞う。

 

「協力! 協力してほしいのだっ!」

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