前編

第一章

第1話 はじまり

 今日もジャパリパークは平和である。

 さばんなちほーの片隅でとあるフレンズ達が話し合っていた。


「どうして、いつもいつも、こういう役回りなのだっ!」

「それは、アライさんだからでしょー」

「あのトラブルメーカーのせいで、大変な目にあったばかりなのに……」

「んん~、しょうがないよね~」


 灰褐色におおわれた行動派のアライグマと大きな耳が特徴的なふわふわとした性格のフェネックの二人である。フェネックはアライグマの事を親しみを込めて“アライさん”と呼んでいる。二人は食料調達の為に、さばんなちほーの中心部へと向かっていた最中だったのだが……。

 事は急変した。


「「――!?」」


「あれは間違えない! 間違えないのだっ!!」

「アライさんー、落ち着いて~」

「あの光、キラキラは、サンドスターが吹き出したに違いないのだ!」

随分ずいぶんと大きな光に見えたよね~」

「あんな大きく光ったら、調べにいくしかないのだっ!」

「はいよー。付き合うよー」


 二人が移動中の遠い前方から、が空を突き刺す様に吹き出した。サンドスターの出現はある意味では新しいフレンズの誕生を示唆しさすると言ってもいい。二人はその現象を知っている為、急ぎその地点へと向かい新しいフレンズを一目ひとめ見ようと現場へと進む事とした。


 そして、しばらく歩くと二人の前に大きな川が立ちはだかる。流れが緩やかな浅い川だが、小柄な二人にとってはかなりの障害物であった。


「また川……。今度こそは、余裕で渡り切ってみせるのだ!」

「アライさ~ん、こっちに……」


 フェネックの言葉が届く前に、アライさんは猪突猛進ちょとつもうしんで川へと飛び込んでいった。四肢ししを使い、必死に泳ぎ川岸へと進む。


 ようやく辿り着いたアライさんの様子を、余裕そうな表情でフェネックが見つめた。


「ゲホッ……、ゲホッ……」

「アライさんー、あっちに大きな木がささってたよー」


 アライさんがフェネックの指差す方向を凝視すると、そこには川底から何本もの大木がまさに刺さった状態であるのが見て取れる。その大木を利用して飛び跳ねながら、フェネックは楽々と川を渡り切ってきたのである。


「誰かが、何かを作ってるのかなー?」

「先に言ってほしかったのだ……、ゲホッ……」

「言ったよー。アライさんが突っ込んでいくからー」

「…………。さ、先に進むのだっ!」

「はいよー」


*


 そして、渓谷へと差し掛かる。

 すると、架かった橋のど真ん中に鎮座ちんざする様に、丸い形態のあおはそこに居た。


「セルリアン、セルリアンが居るのだっ!!」

「見れば、分かるよー」


 二人は茂みに隠れてセルリアンの様子をうかがう。

 セルリアンは従来じゅうらいより、ジャパリパークの平和をおびやかす謎の敵という位置付けにある生物?である。


「アライさん、ここは慎重しんちょうに行くよー。二人で勝てる相手じゃないと思うしー……」

「ここはアライさんにおまかせなのだっ!!」


 フェネックの忠告を遮り、問答無用で大声を発し、立ち上がったアライさんに気付き、セルリアンが反応した。


「げ……」

「……はぁ」

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