ぐんまーちほーであーそぼ!15

「だ、だれ……ですか?」

「知らない人だねー」

 二人の目の前にいたのは、三人の姿ではなく――

「ありがとう、さばんなちほーの民よ」

 "一匹"の応龍がそこにいたのだ。

「あ、あなたは一体……」

 カバンが恐る恐る話しかける。

「私は"応龍"――グンマーを守りし使い人だ」

「おうりゅー? つかいびと?」

 サーバルが訊くも、その答えの意味を理解できずに頭を傾げてしまっている。

「応龍って、あの四霊と言われた伝説の生き物と言われている、あの!」

「いかにも」

 応龍は答える。

「でも、応龍って中国の古書に書かれていたはずじゃあ――」

「グンマーの力を認めた私が、兼任して護り人をしているのだ」

「はぁ……なるほど?」

 カバンは頭を傾げて言う。

「すごーい! おうりゅーって縄張り広いんだねー!」

 サーバルが言う。

「神様に国境なし。これが私のモットーだ」

 応龍は答える。

「ところで応龍さん、ここにいた長老さん達は一体……」

「シロちゃんとレイブンちゃんもいないよねー」

「ほほぉ、まだ気づかないのかね?」

 応龍はからかうような声で訊いて来る。

「長老も、シロも、レイブンも、全てはグンマーの呪いで力を失った私の姿だったのだ」

「えっ……そうだったんですか!」

 カバンが驚いたように言う。

「この身一つでグンマーの呪いを受けきることが出来なくなった私は、呪いを受ける身を分散することで、呪いが体に染み渡ることを遅らせていたのだ」

「な、なるほど……じゃあ、シロやレイブンというのは……」

「私に宿る天使と悪魔だ。シロは天使、レイブンは悪魔――身体を分散するにしても、分けるのは私自身――黒い心も存在してしまったのだろう」

「でも、レイブンさんはそこまで悪い心を持っているようには感じませんでしたが……」

 カバンが言う。

「ふむ、私の心がそこまで黒い気持ちを持ち合わせていなかったのかもしれぬな」

 応龍がそう答える。

「すごいねー! おうりゅーってきれいな心を持っているんだね!」

 サーバルが目を輝かせて言う。

「ほほほ……そう言ってくれると私も嬉しい」

 応龍は照れるように言う。


続く……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る