8話(新環境)
受験には失敗したという事になるのだろうか。塾をやめた頃から勉強などせず、私立校は受験をしなかった。もしも受かればラッキー、記念受験のつもりで都立校を1校受け、当たり前の様に落ちた。
記念受験と割り切っていたからなのかどうかはわからないけれど、別にショックでは無かった。ただ、心のどこかでもしかしたら受かるんじゃないかなんて思っていたのも事実だったが。
地元の公立中学校に通う事は苦痛では無かった。
ありがたい事に私は優しいなどと言われ人に慕われる事が多かった。が、自分なんてとどこか1歩引いてしまうところがあり、友達付き合いは限りなく浅く広かった。
そのためか、中学に入ってからもちょこちょこと話しかけてくれる人たちがいた。
けれど、その分あちこちから
「受験したんじゃないの?なんでいるの?」
と興味本位で訊ねられる事も多かった。
中学に入学して最初の私のクラス、3組には幸いな事に小学校の頃、同じクラスだった千原舞という子がいた。
舞とは特別仲が良いという訳ではなかったが、愚痴や不満が多い子だったので、それを聞いてやればどんどん仲良くしてくれる人だった。それに、癖はあるけれど、元気な子だったので一緒にいても楽に過ごせた。
クラスの表を見て
「同じクラスだね!やったね!」
と真っ先に言ってくれたのも舞だった。
クラスの教室に入り、座席を確認すると、私の席は窓際の後ろから2番目だった。窓際だったのは少し嬉しかったが、同じ班になる他の5人は皆男子だった。
左を見れば窓、右を見れば体格の良い男子に挟まれ、私は入学早々居場所を無くした気分だった。
違う小学校の子であれ、前後左右に1人でも女子が居てくれたら良かったのにと思った。
クラス内で唯一話せる舞は私の3つ前の席だった。周りの知らない子たちにビビって休み時間になればすぐ
「恵子ー、話せる人いないよー、やばい、どうするー?(笑)」
なんていう風に来るだろうと思っていたが、残念な事に彼女の班は私の班とは真逆で、5人が女子という恵まれた班だった。それに、同じ小学校の子が居た事もあり、簡単に打ち解けられているようだった。
私は何とも言えない疎外感のようなものを感じた。普通はそこで自分からその輪に入っていって
「向こう話せる人いないんだよねー(笑)一緒に居てもいい?」
等と言えば良いのだろうが、私にはそれが出来なかった。
私は例えどれ程親しんだ友人であっても、実は私の事を疎ましく思っているのではないか?今ちょうど私の事について不満をもらしていたのではないか?迷惑ではないか?と考えてしまい、なかなか自分から近寄る事が出来ない人だった。
故に勿論、その入学式当日は自由時間も多くあった中、クラスで席から離れず静かにじっと時が過ぎるのを待っていた。
周りはその間にどんどん輪を広げていて、なんとも言えぬ圧迫感に押し潰されそうになりながらも耐え続けるしかなかった。
明日からどうしよう
そんな事を考えながら。
孤独の雑草【未完成】 たくあん @takuan_GR
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