16:エピローグ
ハーレンと共に過ごして三年の月日が流れた。彼女は主に、魔道具の製造と、魔石の精製について教えてくれた。あたしはヤーデと同様、こういった作業が得意らしかった。
また、ハーレンは、転移魔法陣についても伝授してくれた。理解するまでかなりの時間がかかったが、あたしはついにそれを習得した。
そしてあたしは、思うようになった。普通の人間でも通れるような、負荷の少ない魔法陣を作ることができないかと。
それを話すと、ハーレンは難しい顔をした。彼女でさえ、それを作ることができていないからだ。
「しかし、マヤの才能なら、いつかは実現するかもしれんの」
「ありがとうございます。そう言っていただけると、励みになります」
セドは、サンメイリーに残り、農業の手伝いをすることになっていた。あたしは修行の間、一度もサンメイリーには戻らなかった。決意がつくまで。そう決めていた。
修行が終わった日。ハーレンは、屋敷の外まであたしを見送ってくれた。彼女はどこか、寂しそうにしていたが、何かあれば戻ってくると言い添えておいた。
三年ぶりのサンメイリーの村は、何も変わってはいなかった。しかし、あたしは不安だった。セドは果たして、待っていてくれたのだろうか。
ナナの家に着くと、彼女はあたしを抱きしめてくれた。
「お帰りなさい。長かったわね」
「ええ。色々と、時間がかかってしまいました」
「いいのよ、こうして無事に帰ってきてくれたのだから」
「それで……セドは?」
「安心しなさい。今は外に出ているわ」
あたしはナナに言われた通りの場所へ行ってみた。するとそこには、水桶をかついだ愛しい人の姿があった。
「マヤ!」
セドは水桶を放り出し、真っ直ぐにあたしのところへ向かってきた。
「セド、久しぶり。少し老けたわね」
「マヤはちっとも変わらないな。いや、髪がずいぶんと伸びたか」
セドはあたしの髪に触れ、慈しむように頭を撫でた。
「待たせてごめんね」
「いいんだ」
あたしたちは抱き合った。稲穂はいつも通り、風に揺れていた。
出立の日。あたしの隣には、セドが居た。
あたしたちは、まずヤーデの屋敷へ戻ることにしていた。彼女に報告をしたかったからだ。
それからあたしたちは、各地を巡る旅に出る。そして、数多くの魔法使いと出会い、見識を深める。
最終的な目標は、転移魔法陣の真の完成だ。あたしの一生を、それに賭けることにした。
三年をかけてようやく、あたしは覚悟を決めた。
あたしは、彼と生きていく。最期のときが来るまで、ずっと。
「行こう、マヤ」
「うん」
あたしはセドの手を取った。
その手は温かく、力強かった。
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