第17話

今にも雨が降り出しそうな中、テニス部は外で活動をしていた。

小雨程度では部活を中止するなんてことはない。

大会が近いなら尚更である。

だが、そんな中、部活には笙伍しょうごの姿はなかった。

時間が解決してくれる、なんて思っていたがそう簡単なものではなかったようだ。

ここ数日、笙伍しょうごには避けされ続けていた。

休み時間となれば、呼びかける隙もなく教室をすぐに出ていかれてしまう。

どうしたらいいものか――。

「はぁ……。っいた」

ぼんやりと考えていたら、飛んできたボールに気付けず直撃してしまった。

そのボールを打ったであろう後輩が走り寄ってきて謝ってくるが、それすらも頭に入ってこないほど笙伍しょうごのことを考えていた。

なんで、ここまで考えてしまうのだろうか。

片岡かたおか

名前を呼ばれ、声が聞こえた方へと振り返る。

そこには、ちょいちょいと手招きをしている石沼いしぬまが立っていた。

真治しんじは腰を擦りながら、石沼いしぬまのもとへ歩み寄る。

「お前さ、鈴木すずきと喧嘩でもしたわけ?最近、一緒にいるところ見かけないけど」

「いや、そーいうわけでは」

近くに行くなり、石沼いしぬまに聞かれ言葉に詰まる。

笙伍しょうごは自分を避けていることは誰から見ても一目瞭然だった。

だが、喧嘩したわけでもないのでなんと言えばいいのか分からなかった。

「別に、喧嘩に口を挟もうとかではないから。ただ、鈴木すずきの部活休んでる理由を聞きたかったんだが……」

この様子じゃ話してないよな、と石沼いしぬまは呟いた。

鈴木すずきにしては珍しく『休みたい』としか言ってこなくてさ。まさか、お前と喧嘩したからなんてガキみたいな理由ではないと思うがな」

笑いながら話してくる。

真治しんじと顔を合わせにくいという理由だろうから、石沼いしぬまの話はあながち間違いではないだろう。

「その時の鈴木すずきの顔がさ、深刻そうっていうか何かに悔やんでるような顔してたから気になって。授業終わる度にすぐに教室を出て行ってるみたいだから、お前以外の奴とも話してないんだろうし」

「悔んでる?笙伍しょうごが?」

石沼いしぬまの口から出た言葉に引っかかった。

原因というものを知っている手前、複雑な心境になる。

「とりあえず、お前らいつも一緒にいたんだから相談とか乗ってやれよ。ああ見えて鈴木すずきの奴、自分から悩みとか話さな……」

石沼いしぬまの話を最後まで聞かず、真治しんじはテニスコートから走り出していた。

心に渦巻いていた感情がどんどん苛立ちへと変わっていた。

「オイ!!だからって今行くんじゃ……。って、行っちゃったし」

石沼いしぬまのため息は真治しんじに聞こえることはなかった。

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