第16話

翌日、真治しんじは教室に入るなり真っ先に席に座っていた笙伍しょうごのもとへと歩いていく。

だが、真治しんじの姿を見るなり笙伍しょうごは逃げるようにして教室から出て行った。

「おい、笙伍しょうご!!」

それを追いかけるように真治しんじも教室を出る。

「ちょっと、待てって!!」

追い付くなり、笙伍しょうごの手首を掴み自分の方へと体を向かせる。

だが、笙伍しょうごは目を合わせようとしなかった。

「逃げることはないだろ」

「……ごめん」

文句の一言でもと思っていたはずなのに、笙伍しょうごを前にして何から話していいのか言葉が浮かんでこない。

「本当に、昨日はごめんっ」

そう言うと、掴んでいた手を振りほどき笙伍しょうごは走って去ってしまった。

昨日の出来事があって自分もだが、お互いどう接していいか分からなくなっている。

時間が経てば2人で落ち着いて話せるようになるだろう。

真治しんじはそう思うことにして、笙伍しょうごの後は追わずに先に教室へと戻った。

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