第13話


先生に半ば強引に押し付けられた荷物を教室へ運びながら、笙伍しょうごは複雑な心境のまま廊下を歩いていた。

真治しんじにはもう少し自分の立場というものを自覚してもらいたいものだった。

いくらなんでも、気を許しすぎではないだろうか。

仮にも、自分に好意を持っている相手なのだから。

真治しんじとはクラスも部活も一緒だったこともあって、高校で初めて知り合ったにも関わらず、すぐに仲良くなっていた。

そんな友人にいつから恋愛感情を抱いてしまったのか……。

正直、真治しんじに気持ちを伝えたことに自分自身が一番驚いていた。

テニスコートで真治しんじに言ったことは本心だったはず。

告白なんてするつもりはなかったし、友人として隣にいれればそれだけでいいと思っていた。

だが、その気持ちとは裏腹に真治しんじの隣に自分以外の人がいるところを見たくなかった。

異性ならなおさらだった。

奈沙なずなのことだって、あんな話を聞いてしまったのもあったが仮に真治しんじが告白して本気で嫌っている相手だったら断っただろうし、受け入れたとしても真治しんじの良いところを知ることが出来たかもしれない。

我ながら自分勝手だと分かっていた。

だが、真治しんじもさっきみたいに後ろから抱きつこうが、されるがままになってるのもどうかと思う。

友人としか思っていないからなのか、文句を言いつつも笙伍しょうごを押しのけることはしないのだ。

『振り向かせてみせる』とは言ったものの、ぶん殴られでもしたら諦めがつくような気がしていた。

それが、拒絶する様子を見せない真治しんじに戸惑いさえ感じていた。

嫌なら嫌で突き放してくれなければ期待してしまうではないか――。

何度目になるか分からないため息をつきながら、笙伍しょうごは教室へと向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る