第9話

笙伍しょうごが俺のことが好き?そんな冗談で、なんでこんなに動揺してるんだよ)

そう思いながらも、真治しんじは空き教室を早足で出た後、そのまま自宅に帰ってきていた。

とてもじゃないが、部活など出られる気分じゃなかった。

そして、奈沙なずなに告白する気分でも。

まさか、一番隣にいた友人が自分に対してそんな感情を抱いていたなんて。

驚き以外、何も出てこなかった。

真治しんじはベッドに横になりながら、昨日の話を思い出していた。

笙伍しょうごは自分に好きな人がいるのを知っていた。

もちろん、自分は友人としてしか考えたことはなかったし、笙伍しょうごもそんな素振りを見せなかったので気付きもしなかった。

――改めて考えると、笙伍しょうごの語った言葉全てに自分が当てはまっていた。

ずっと恋愛話を避けてきた理由がこれだったとは。

頭の中で整理が追い付かない。

奈沙なずなのことも、仮に笙伍しょうごの話が本当だったとしたら、自分が思っている性格とは全然違うものになるようだ。

全てが信じられない。

――特に笙伍しょうごのことが。

明日になったら、今日のことが無かったようになっていればいい。

そんなことさえ思ってしまう。

「どんな顔で会えばいいんだよ」

真治しんじはベッドにうずくまるようにして、纏まることのない考えをひたすら頭の中で繰り返していた。

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