第8話

真治しんじ笙伍しょうごに連れられ、空き教室に入った。

しばらく、2人の間には沈黙が続く。

「……あのさ、真治しんじ

笙伍しょうごは決心したように声をかけてきた。

矢木やぎさんに告白するのは、やめた方がいいと思うんだ」

やはり、彼女のことか。

先程の考えが確信へと変わっていく。

「昨日、帰りに……」

「お前も彼女のこと好きなのか?」

笙伍しょうごの言葉を遮り、真治しんじは思っていたことを聞いた。

「なんでそうなったの」

笙伍しょうごは驚いた顔をして聞き返してくる。

「だって、今日1日ずっと彼女のこと見てたろ!!それ以外に理由が考えられない」

真治しんじは声を荒げていた。

気持ちが高ぶってしまって、落ち着いて話すことができない。

「別に彼女が好きで見ていたわけじゃ」

「じゃあ、なんで見てたんだよ」

真治しんじ笙伍しょうごに詰め寄る。

笙伍しょうごは目を逸らしながら、口を開いた。

「昨日の帰りに、たまたま見かけたんだよ。その時に話聞いちゃって……」

語尾がどんどん弱々しいものへとなっていく。

「彼女がどうしたんだよ」

矢木やぎさん、クラスの人たちのこと良く思っていないようで……」

笙伍しょうごはここで一呼吸ついて、言葉を続ける。

「あの馬鹿騒ぎしてるクラスに反吐が出る、って」

言葉の意味が理解できなかった。

「だから、矢木やぎさんに告白するのはやめた方がいいよ」

笙伍しょうご真治しんじの肩を掴んでくる。

だが、そんな言葉に真治しんじは苛立ちを覚えていた。

「何でお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ」

肩を掴んでいた笙伍しょうごの手を振りほどく。

「お前の話が本当だったとしても、とやかく言われる筋合いないだろ」

「それでも俺は、付き合ってほしくないんだよ!!」

笙伍しょうごは叫んだ。

真治しんじが傷つくって分かってて、応援なんてできるわけねーよ。それに……」

笙伍しょうごは真剣な目で真治しんじを見てくる。

「俺は、真治しんじのことが好きなんだよ」

「……はい?」

予想もしていなかった言葉に固まってしまう。

「だから、なおさら付き合わせたくない」

笙伍しょうご真治しんじの腕を掴もうと手を伸ばしてきた。

だが、真治しんじは何も言わず、その手から逃げるように空き教室から出ていくことしか出来なかった。

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