第7話

やはり今日1日、笙伍しょうごの様子はおかしかった。

休み時間はもちろんなのだが、授業中でさえも考え込んでいる様子だった。

度々盗み見ていると、笙伍しょうごの視線の先には――奈沙なずながいるのだ。

なぜ、彼女を見ているのか。

笙伍しょうごの様子がおかしくなったのは、昨日の部活後から。

というと、真治しんじに思い当たる節は1つしかなかった。

(俺の送ったメールか?)

もし仮にそうだとしたら、なぜ笙伍しょうごが彼女の方を見て考え込んでいるのか見当がつく。

――笙伍しょうご奈沙なずなのことが好きだから。

フッと、昨日の部活で話したことを思い出す。

『その人に好きな人いるの知っているから』

それは、意味ではなくということではないのか。

だが、そうなると『友人の関係のままの方がいい』という言葉の意味は何なのだろうか。

そこで考えは行き詰り、真治しんじは考えることをやめた。

笙伍しょうごは何も言ってこないのだ。

それなら、そのまま告白してしまえばいい。

最終的には、そう思うようになっていた。

「気を付けて帰れよ」

石沼いしぬまの言葉で、いつの間にか帰りのHRホームルームが終わっていたことに気が付く。

いざ、彼女に声をかけようと思うと緊張してきた。

奈沙なずなが席から立ちあがる。

多分、いつものように図書室へ向かうのだろう。

その前に声をかけようとは決めていた。

真治しんじも立ち上がり、奈沙なずなに声をかけようと距離を縮める。

だが、誰かに腕を掴まれたことにより近づくことを制止させられた。

真治しんじは振り返り、相手を見る。

――笙伍しょうごだ。

「悪いんだけど、行く前に少し話せる?」

なんとなくだが、引き留められるような気はしていた。

朝と変わらず、笙伍しょうごは険しい顔をしている。

「あぁ」

真治しんじは頷き、笙伍しょうごの後をついて行くようにして教室を出た。

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