第5話

結局、昨日は笙伍しょうごからの連絡は返ってこなかった。

いつも、返事はすぐに来るので珍しい。

不思議に思いながらも登校すると、笙伍しょうごは既に教室にいた。

だが、いつもなら誰かと和気藹藹わきあいあいと話しているのに今日は自分の席で何か考え込んでいるようだった。

――何かあったのだろうか。

笙伍しょうごは悩みがあっても人には相談しないタイプなのは知っていた。

でも、1人で抱え込まないで友人なのだから頼ってくれてもいいのに。

そんな笙伍しょうごを心配していた。

とりあえず、真治しんじ笙伍しょうごの席まで近づく。

隣まで来ると、笙伍しょうごは気付いたようで「おはよう」と声をかけてきた。

「昨日はごめん。返事返せなくて」

笙伍しょうごから言われた言葉で、メールを確認してくれてたことが分かり内心ホッとする。

「その件なんだけど、今日の放課後に言おうと思うんだ」

「え、今日!?急じゃない?」

この決意が薄れる前にと思ったのだが、真治しんじの言葉を聞いた途端に笙伍しょうごは表情を曇らせていく。

――やはり、様子がおかしい。

「なんだよ。今まで散々、告白しろって言ってたくせに」

「いや、それはそうなんだけど。聞いて驚いた」

そう言って、笙伍しょうご奈沙なずなの方を険しい顔で見ていた。

「……何かあったのか?」

あまりにも様子がおかしいので、耐えられずに聞いてみた。

「いや、別に何もないけど」

そう言いながらも、笙伍しょうごの表情は変わらない。

「……なぁ、告白やめておいたら」

予想もいていなかった笙伍しょうごからの言葉に真治しんじは耳を疑った。

「急に何を言うんだよ。今日のお前、様子おかしいぞ」

笙伍しょうごは何か考えているようだったが、理由を言う様子はなかった。

そうこうしているうちに、朝のHRホームルームの時間になったらしく担任の石沼いしぬまが教室に入ってきた。

真治しんじは何も聞けないまま、自分の席に戻ることしかできなかった。


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