第3話

部活が終わって自宅に帰ってきた後も、真治しんじ奈沙なずなのことを考えていた。

そして、笙伍しょうごの言葉も。

(そういや笙伍しょうごの好きな奴の名前、聞きそびれた)

真治しんじは自室のベッドの上で、寝転がりながら部活の時に話したことを思い出していた。

笙伍しょうごは交流関係が幅広く、好意を寄せている人なんて真治しんじには見当もつかなかった。

居なくなっていると思えば隣のクラスに紛れていたり、職員室で先生と笑って世間話をしていたりするぐらいだ。

あの社交的な性格なら誰にでも好かれるだろう。

だからこそ、告白せずに黙って見守っているだけなんて真治しんじには意外なことだった。

笙伍しょうごのことだから、何が何でも相手を振り向かせようとするイメージがあったのだ。

(案外、アイツも消極的なんじゃないか)

だが、自分が笙伍しょうごと同じ立場だったとしたら、相手に好きな人がいると知っていて素直に応援できるだろうか。

もし、奈沙なずなに好きな人がいたとしたら、自分以外の人と付き合っていると知ってしまったら――。

正直、耐えられそうにない。

告白して、フラれてしまう方も自分には耐えられそうにないが。

どちらにしろ、そんな風になるぐらいなら当たって砕けた方がまだマシだと思う。

(やらないで後悔するなら、やって後悔した方がいいって言うしな)

ふっと、真治しんじの脳裏に学校で見た夢の内容が甦る。

夢の中でした彼女とのデート、自分の隣で微笑んでくれる彼女の笑顔。

仮に告白が成功すれば、それが現実となる。

もちろん、夢の中ではすることの出来なかった――キスも。

自然と真治しんじの表情が緩む。

――告白してみようかな。

そう思い、近くに置いていた携帯を手に取り笙伍しょうごにメールを打ち始める。

こうでもしないと、明日になったら今の決意が薄れてしまいそうだ。

それに笙伍しょうごだったら、きっと背中を押してくれる。

真治しんじは、笙伍しょうごへメールを送った。

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