狭間に堕ちた
夕霧 夜薙
縄を手に入れた少年
病んだ
と言っても家から徒歩17分のホームセンターで人の目を気にしながら買ってきたモノだが。
家に持って帰る途中に鼠を捕まえる為の網の罠を買った。
家に帰り鍵を探す。家の鍵。庭の鍵。窓の鍵。冷蔵庫の鍵。書庫の鍵。ドアノブの鍵。ドアの鍵。机の鍵。箪笥の鍵。棚の鍵。その他諸々。
家に入り…手、顔を洗い先程かったばかりの新品の鼠取りを仕掛ける。
学校には1年半行っていない。それに親は共働き。それに転勤続きで帰ってすら来ない。いや、帰って来られては困る。
所で…なんだろうか?洗面台で顔を洗っていただけなのに洗面台自体が血の
14分で拭き終わり、鼠取りの様子を見に行く。
とりあえず…親が帰ってくる前に
少年の次に馬鹿だった鼠は死にかけが1匹もがきながら捕えられていた。
絞首刑の真似事をしようと考えた。
何の為でも無い。自分自身の欲の為に。親への主張の為に。
なので実験体として鼠を使う事にした。
本来ならばラッタの方が良いのだけれど。
歴史や海外の絞首刑では人間だけでは無く殺処分法としてそれらが用いられていた。
テレビやアニメ等で観る…俗に言う首吊り自殺は仕方が違う。
落下式では無く首に掛けた縄を引き上げる方法など数多く存在する。アニメ等で出てくる首吊りの原理は頸動脈が圧迫される為に頚動脈胴反射によって急激に血圧が低下する。そして痛みを感じる暇も無く約七秒で意識喪失に至る。
頸動脈胴反射が起こるので首吊り自殺の中でも最もシンプルで安楽死に近いと言われている。
けれど、この自殺法には大きな欠点がある。
それは
頸動脈胴反射の場所が少しでもズレてしまえば安楽死所か苦しんで意識を失う事になる。
失敗すれば後遺症を残し生きづらくなるだろう。
だから、自分で試す前に其処に居る存在価値があるかどうかタヒんで居ないので分からない得体の知らない鼠を使って絞首刑をしてみる事にした。
結果。鼠は死んだ。いや、殺した。脚が震えていたのをスマホのカメラで撮り永久保存。
次は自分の番だと深呼吸をし念入りに場所を確認する。二年前の自分を思い出し涙腺が緩みそうになるが堪える。何故なら泣いてる内に縄の部分とズレて首吊りをしてしまえば苦しくて死ぬから。
少年は『楽』に死にたいのだ。
自分が如何に完璧で死ぬかという。言うなれば…完璧主義者の他、少年を例えるものは無い、本人自身確信していた。
けれど、その完璧さを求める余りに安楽死の意味を食い違った捉え方をしていた。
そして5分48秒後に少年の意識は途絶えた。
完璧に、楽に。
けれども少年の青白くなった顔からは恐怖、怒り、苦しみの様々な念が伝わって来る様な…そんな死に顔をしていた。
死に何を求めるかなんて人それぞれだ。
だけど、求めすぎて死の意味を理解せずに我が物顔で語る輩は嫌悪の気持ちに苛まれる。
自己中心的乍に短調かつ完璧に死にたかった病んだ暇人の考え。
狭間に堕ちた 夕霧 夜薙 @Natsuml-0419
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