第653話加奈子の上京(7)

亜美に、大旦那との定食屋行き計画を無事にまとめた。


その亜美に、加奈子は感心しきり。

「すっごい!その手際の良さ」

華蓮が加奈子に説明をする。

「何しろ、超一流会社の敏腕OLだもの、経理から接客までバッチリ」

亜美は、品よく笑っているだけ。

道彦もうれしそうな顔。

「とにかく安心できる、だからみんなのお姉さんみたいさ」

由紀も亜美には全幅の信頼を寄せている。

「できればアホの史も鍛えてもらいたい」

と思うけれど、この場ではなかなか言い出しづらい。


そんな亜美のスマホにマスターからコールが入った。

マスター

「明日は定食屋って大旦那から言われたけれど、どこにする?」

亜美

「どこか、おすすめのお店などはございますでしょうか・・・」

マスター

「そうだなあ、何人か先輩もいるし、弟子もいるよ」

「清は、まだ都内には馴染みがないから、俺が探すよ」

「大旦那を連れて行くんだから、下手は打てないよ」

亜美

「本当にマスターには、いつもいつもお世話になりまして」

マスター

「いや、いいんだ、俺もたまには他人の料理を食べないとさ」

「・・・って、それはいいけれどさ」

マスターの声が小さくなった。

亜美

「どうかしたんですか?急に」

マスター

「涼子には内緒にしておいて欲しい」

亜美はクスッと笑う。

「え?どうしてですか?」

マスターの声がまた小さくなった。

「涼子は定食が好きなんだ、特に生姜焼き定食とかさ」

亜美はにっこり。

「そうですか・・・生姜焼き定食美味しいですよね」

マスター

「・・・涼子が近づいて来た、電話切る」


亜美とマスターの会話は、そこで終わった。

亜美

「マスターもOK、マスターがお勧めのお店に行きましょう」

華蓮

「今は選んでいるのかな?」

亜美

「えーっと・・・今は涼子さんを誤魔かしているかもです」

亜美以外の全員がキョトンとなるので、亜美が「事情」を説明すると、聞いた全員が手を打って大笑い。


次に清から亜美にコール

「大旦那から電話だったのですが、定食屋さんですか?」

亜美

「はい、マスターのおすすめのお店に行く予定です」

「それは勉強になりますねえ・・・楽しみです」

「関東の味付けもわかりますし」

亜美は、声を落とした。

「くれぐれも、涼子さんには内緒にしたほうがいいかもです」

「え・・・それは何か?」

亜美がその「事情」を説明すると

清は笑った。

「おそらくマスターは、生姜焼を作らされているでしょうね」

「涼子さんは勘が鋭いし、マスターは逆らえないし」


亜美は少し笑って

「加奈子さんと由紀ちゃん、史君の提案なんですが、そういった家庭料理の講座もどうかってことなんです」

「マスターとの話では、そこまで進まなかったので」

「うーん・・・面白いですねえ・・・」

「少し考えて見ます」

「それでは、明日よろしくお願いいたします」


亜美と清の会話が終わった。

亜美が会話の内容を説明すると、また全員の目が丸くなる。


華蓮

「すっごい・・・嫌みなくまとめた」

道彦

「さすが亜美さん、僕のフィアンセ」

加奈子

「いいなあ、こういうお姉さんが欲しい、弟子入りするかな」

由紀

「ふむ、素晴らしい、これでカフェ・ルミエール文化講座も道彦さんも安泰だ」


史は黙っている。

「こういう冷静なお姉さんが欲しかった」

しかし、とても、由紀の前では発言が出来そうにもない。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る