第652話加奈子の上京(6)

加奈子、由紀、史が到着したカフェ・ルミエール文化講座事務局は大騒ぎになった。

華蓮

「わーーー!加奈子ちゃん、おひさーーー!可愛いねえ!」

加奈子

「うん!華蓮ちゃんに逢いたかったの!また来年からたーっぷりお世話になります!」

道彦も加奈子に声をかける。

「加奈子ちゃん、道彦だよ、もう十何年ぶりかなあ」

加奈子は、にっこり。

「わーーー道彦さん?かっこいい!」

「で、御婚約おめでとうございます!」

ペコリと頭を下げると、亜美

「亜美です、お世話になります」

加奈子は、亜美に深く頭を下げる。

「はい、こちらこそ、お噂の通り、しっかりとしたお方、今後ともよろしくお願いいたします」


由紀と史は、「加奈子ちゃん、すごくテンションが高い」と、笑っている。


そんな挨拶も終わり、全員座って話しはじめる。

華蓮

「ねえ、定食屋に行って来たの?」

「うん、学生街でね、僕が大盛ナポリタン、姉貴が肉野菜玉子炒め、加奈子ちゃんがトンカツの定食」

道彦

「名前を聞いただけで、お腹が減って来た」

亜美

「そうねえ、普通のものだけど美味しいよね」

加奈子

「同じ定食でも、京都とは味が違う、ガツンと来る味、パワーがすごいって感じかなあ」

由紀

「マスターとか清さんとは別系統だと思ったの」

華蓮

「面白いけれどねえ・・・そういう普通の家庭料理の講義も面白いね」

道彦

「和洋中でも折衷でもいいかなあ」

亜美

「マスターと清さんにも、一応は相談したほうがいいでしょうね」

「マスターと清さんの講義は、本格的な料理になるので、それはそのままの線でいいと思うんです」

道彦

「やはり大旦那の一言も必要かなあ」

由紀

「やはり連れて行く?」

加奈子

「面倒だからマスターと清さんも連れて行こうよ」

「後で文句を言われても困るし」

亜美

「私から御三方に連絡しましょうか?」

華蓮は、少し笑って頷く。

「亜美ちゃんは、大旦那のお気に入りなの」


亜美がまず電話をかけたのは、大旦那。

「大旦那様、亜美です」

大旦那

「おや、亜美さん?元気かい?どう?仕事は順調?結婚式楽しみだねえ」

・・・・長々と続くので一部省略。


亜美はようやく言葉の切れ目で、要件を告げる。

「実はですね、加奈子さんと由紀さんと史君から、新しい提案がありまして」

大旦那

「へえ、どんなの?」

亜美

「大旦那にはお話するのが難しいのですが・・・」

大旦那

「ああ、心配ないよ、言ってごらん?」

亜美

「学生街の定食屋さんに、三人が入ったそうで、その際に大変美味しかったそうで」

大旦那

「ああ、学生街の定食かあ・・・実は好きだなあ・・・私も行きたかったんだ、本当はね、家内が邪魔するなって言うから、行かなかったんだ」

亜美

「それでですね・・・また、別のメニューを食べてみたいと・・・三人、そして私たち、つまり華蓮さんと道彦さんも便乗しようと思っておりまして・・・」

「そんな話をしていたら、大旦那様も誘いたいなあとの話に」

「少々・・・格式には欠けるのですが・・・」


大旦那は、笑い出してしまった。

「わかった。心配はないよ」

「ついでにマスターと清も私から誘う」

「たまにはガツンとした気取りがない料理もいいんだ」


大旦那の声は大きい。

亜美は、スマホを少し離して聴いているので、全員の耳に届いている。



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