第617話由紀と史のデート?(6)

由紀と史は、ルクレツィアたちをエレベーターの前で待っていた。

それは、ルクレツィアから、待つように言われたため。

由紀は、少々不安な様子。

「ねえ、どうなるの?」

史は、冷静。

「大丈夫、すごく頭が切れて、善悪がはっきりしていて、包容力のある女性」

「少なくとも、僕たちの困ることはしない」

由紀は、頷いた。

「確かに、あの包容力はすごい、あの胸もすごい」

と言って、史の顔を見る。

「史、ああいう豊満な女性が好きなの?」

史は、いきなりの言葉に慌てた。

「は?意味わかんない」

少々呆れるけれど、由紀はまた違う。

「ああ、あの胸、わけて欲しいなあ」

ますます史が理解できないことを由紀が言っていると、ルクレツィアが戻って来た。


ルクレツィアは、毅然とした表情。

「まあ、入る必要ないよ、キャンセルしてきました」

「単なる金目あての料理屋、それと外国人蔑視」

連れてきたイタリア人たちも、頷いている。


史は、頭を下げた。

「そうですか、少し心配でした」

由紀も同じように頭を下げた。

「ご迷惑をおかけしました」


しかし、ルクレツィアは、今度は笑って首を横に振る。

「あなた方が、謝る必要はないよ」

「それより、気分直しで、どこか行きましょう」

「私の知っているお店でいいかな?」

と言い、史の顔を見ている。


史は、由紀の顔を見た。

「ルクレツィアさんの知っているお店なら安心」

由紀も、ここでは史を信じるしかない。

由紀が頷いたので、史はニッコリ。

「ルクレツィアさん、おまかせです」


ルクレツィアは、そのままエレベーターの下りのボタンを押している。


エレベーターに乗り込むとルクレツィアは史に

「あの支配人には、決定的なことを言ったよ」


史は、ピンときた。

そして、「もしかして、大旦那の名前とか?」と聞き返すと、ルクレツィアは頷く。

また、支配人に対しての怒りがこみあげているようだ。

「ああいった類の経営者には、そういう名前が一番効果があるの」

「おそらく、仲居には口止め工作をするんだろうけどね」

「でも、そんなことでは済まされないことも、わかっているはず」

「今頃、震えて仕方がないだろうね」


エレベーターから降り、由紀と史が、ルクレツィアがおそらく乗って来たベンツに同乗しても、ルクレツィアの怒りはおさまらない。

「料理に関係する人という以前に、人間として許せない」

「必ず、始末をつけるよ」

由紀と史が少々引いていると、ルクレツィアは誰かと電話をはじめている。

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