第571話美智子と史は、大旦那のお屋敷に。

史が目を丸くしていると、美智子のスマホが光った。

美智子がスマホを見ると、大旦那の奥様からのコール。

奥様は、申し訳なさそうな雰囲気。

「ねえ、美智子さん、急で申し訳ないんだけど、史君と一緒に来られる?」

「何しろ、大旦那が、顔を見たいって言いだしてね」

「そんな急なことを言うんだったら自分で出向けばいいのにって、言ったのだけど」


美智子としては、義母の奥様から言われれば、否応が無い。

史の顔をチラッと見て

「わかりました、今から史と伺います」

「由紀は・・・」

それでも、由紀について確認する。


奥様は、

「えーーっと・・・言いづらいけれど、美智子さんと史君だけ」

「美智子さんは、文化講座開講記念のお菓子で」

「史君は、大旦那の挨拶文の最終チェックで・・・由紀ちゃんには、そんな風に」

奥様の口調から、「神経」を使っている雰囲気が伝わって来る。


美智子は、「はい、了解しました、ただいま」と通話を終え、史に奥様が言った通りのことを伝える。


史は、素直に話を受けた。

「そうだね、最終チェックだから、大旦那の面前のほうがいいね」


美智子

「じゃあ、その旨を書いたメモを置いておく」

と、テーブルにメモを置き、美智子の運転する車で史と大旦那の家に向かう。


少し走り出したところで、史がポツリ

「姉貴、また怒るかな」


美智子は首を横に振る。

「そんな気にしてどうするの?史の人生だもの、由紀が何を言っても気にしなくていい」

「史は、しっかりやっているもの、キチンとね」


史は、「うーん・・・」とうなった。

「あれで、案外姉貴って泣き虫で、寂しがり屋」

「時々、嫌で、その後心配になる」


美智子は、史に少し強めの言葉。

「でもね、史、いつまでもそれじゃだめ」

「競争激しい音楽業界を生き抜くんだから、個人としての強さも必要」

「実は迷っているの?家を出ること」

「由紀にかこつけるのは、よしなさい」

「それは史の、甘え」


美智子の言葉が効いたらしい。

史は姿勢を正した。


そして黙り込んでしまった史に、美智子。

「まだ、時間があるから、しっかり考えなさい」


その美智子も、実は寂しくて不安な顔になっている。










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