第549話華蓮と史(2)

華蓮と史は、留守番を久我道彦に託し、カフェ・ルミエールのビルを出た。

目的地は鎌倉。

車は華蓮のBMW、当然、運転手は華蓮になる。


史は車に乗り込むなり、ホッとした様子。

「ありがとう、華蓮ちゃん、呼び出してくれて」


華蓮は、そんな史が面白い。

「うん、おそらく、そういう反応になると思ったの」

「由紀ちゃんが、うるさいんでしょ?史君」


史は、大きく頷く。

「全くうるさい、何から何まで口を出してくる」

「すぐにポカポカしてくるしさ」


華蓮は、笑ってしまった。

「おそらくね、由紀ちゃんにとって、史君は小さい子供のままなの」

「だから心配でしかたがないの」


史は、少しむくれた。

「そんなこと言ってもさ、僕だって高校三年生だし」


華蓮は、また笑う。

「そう?すっごく可愛いくて童顔だし、色白できれいな顔をしているから、そう見えない」


史は、口をへの字。

「そう言われてねえ・・・」


車はいつのまにか、神奈川県内に入っている。

華蓮がフフッと笑う。

「ところでさ、史君」


史は、その笑いの意味がわからない。

「え?何?華蓮ちゃん」


華蓮は、また笑う。

「鎌倉を少し散歩するんだけどね、暑いからさ」


史は、またしても、意味がわからない。

「まだ熱中症のこともあるし・・・海に行くの?」


華蓮は首を横に振る。

「いや、まさか海には行かない、でも、ちょっとだけ泳ぎたいの」


史は、「マジ?」といった顔。


華蓮は、言葉を続ける。

「ねえ、少しだけなら大丈夫、一時間くらいなら大丈夫だって」


史は、必死に理由を探す。

「水着持っていないし、華蓮ちゃんだって持っているの?」

とにかく水着を持っていないことを理由に断りたいのである。


しかし、華蓮はあきらめない。

それどころか、フフンと笑う。

「えへへ、実は、私は準備済み」

「そしてね、史君のも私が何とかする」


史は焦った。

「えーーっと・・・マジ?」

「何とかするって言われてもさ・・・」


そんなオロオロ気味の史に華蓮は、言い切ってしまった。


「いいから、私の言う通りにして」

「由紀ちゃんを見返すぐらいに、日焼けして帰ろうよ」

「もう、決定!」


これで華蓮は、なかなか強引である。




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