第550話華蓮と史(3)

華蓮の強引さは、止めようがなかった。

鎌倉付近で、大きなスポーツショップを見かけると、早速車を駐車場に入れた。

そして、引き気味の史の腕を無理やりに組み、男性用水着売り場に。


華蓮

「たまにはド派手な真っ赤にしたら?史君」


史は、もはや逃げられないと思った。

ここで逃げて、華蓮にそれを由紀に告げ口されたら、また頭をポカリされると思った。

「あ・・・すみません・・・そこの濃紺ので・・・」

結局、史は服装に関するものは、地味なものを選ぶタイプらしい。


さて、そのスポーツショップを出て、華蓮と史は再びBMWに。

そして鎌倉まで走り始めた。


史は、買ってもらったので、お礼を言おうと思った。

「華蓮ちゃん、ありがとうございます」

キチンと頭を下げたりする。


しかし、華蓮はケラケラと笑い出した。


史は意味がわからない。

キョトンとしていると、華蓮はまた笑う。

「だって、今日の原資は、大旦那だもの」

「大旦那が、史も日焼けするぐらいがいいって」

「たっぷり、せしめたのは私だけどさ」


史はため息をついた。

「はぁ・・・仕方ないなあ・・・」

「心配かけちゃったしなあ・・・いろいろ・・・逆らえない」


少し下を向いた史に、華蓮が声をかけた。

「ねえ、史君、先にお食事にしようよ」


史も、それで少し考える。

「そうだね、何がいいかなあ・・・和食?」

どうも、史は「鎌倉=和食」のイメージが固定化しているようだ。


しかし、華蓮は首を横に振る。

「違うなあ、肉系にする」


史は「え?」という表情。

「華蓮ちゃん、ホテルで食べるの?」

史としては、プールもホテルのプールなので、レストランもホテルになると考えている。


華蓮は、それにも首を横に振る。

「違うよ、もっと豪快な肉を食べるの」

「史君の繊細キャラを変えてしまうような」

そう言って、またケラケラと笑う。


史は、そこでまた引き気味。

そして思い出した。

「そういえば、華蓮ちゃんって、言い出したら引かないタイプだった」

「ある意味、姉貴より強い」

「それだから、子供の頃、いつも姉貴からかばってもらって」

「困った時は、華蓮ちゃんの所に逃げ込んだ」


その史に、華蓮がまた一言。

「いいの、史君は、私に全て任せなさい」

「由紀ちゃんのことも、里奈ちゃんのことも、そして・・・問題児のあの子も・・・」


その華蓮の最後の「問題児」は、史には全く理解ができていない。

史は、首を傾げている。




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