第544話史が熱中症でダウン(7)

史は、その日は結局、起き上がることが出来なかった。

また、集まった里奈、華蓮、マスターの一家も、心配しながら帰るしかなかった。


全員が帰った後、美智子はため息をつく。

「まあ、ひどい話なんだけれどねえ・・・」


由紀も、難しい顔を変えない。

「華蓮ちゃんの言う通りだと思うよ、ここで泣き寝入りすると、来年も被害者が出る、それをわからせないと、寝込むぐらいじゃなくて、命に関わる場合もあるんだから」


美智子は、時計を気にしている。

「それにしても、お父さん、遅いねえ、史は起きられないし」


由紀は、すぐに反応、スマホを持ち出して、ラインの画面を開いている。


父晃の反応もすぐにあった。

「ああ、言わなくてごめん、今、マスターに呼ばれてカフェ・ルミエールにいる」

「華蓮ちゃんもいるよ、久我道彦君も一緒」

「自治会長もいて、あ、今、学園長も入って来た」

「なんでも、高校野球で問題が発生したとかで」


美智子は、由紀の顔を見た。

「父さんも、言わないから・・・」

「由紀も行ってきなさい」


由紀も、すぐに立ち上がった。

「母さん、史をお願い」

そのまま、カフェ・ルミエールに向かった。



その由紀が、カフェ・ルミエールに到着した時には、大方の決着がついていたようだ。

学園長が由紀を見るなり、深く頭を下げてきた、

「本当に申し訳ない、史君には可哀そうなことをしてしまった」

「それと、応援に出向いた生徒や地域の方々にも、失礼にしてご迷惑をかけてしまった」

「これも、学園長の管理不足と教員への指導不足です」


由紀は、首を横に振る。

「そんな学園長の責任とかは、私にはわかりませんけれど・・・」

そして、声を詰まらせた。

「とにかく、あの監督を何とかしてください、傲慢過ぎます」

「史もそうだけど、他の学生も、どれほど苦しんでいることか・・・」

由紀は、結局泣いてしまったので、父晃に抱きかかえられている。


自治会長からも、学園長に

「また何度も言うようだけれど、善処をお願いします」

「こんな涙を見たくないので」


最後に、マスターから学園長に強めの一言があった。

「学園内のことは、お任せしますが、ひどくなると・・・わかりますよね」



数日後、野球部監督は学園定例の理事会に呼びだされた。

その席で、自治会長と野球部親の会による「指導改善嘆願書、その根拠となる野球場応援で見かけた問題行為、問題発言の録画」、「野球応援後の多数の熱中症発症者」も報告された。


野球部監督は、理事会に出席するまでは「ここまでの問題」になっているとは、全く把握していなかった様子。

かなり驚いていたけれど、その把握不足も、理事会から厳重注意。

また、監督に対する降格、減俸処分も決議されたけれど、それに不満を覚えた監督は、「自主的に」学園を去ることになった。



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