第545話史が熱中症でダウン(8)

さて、学園長が帰った後、カフェ・ルミエールでは、様々な話し合いになった。


史の父晃は、いろいろ考えている。

「大旦那に言うと、すごく大事になるよ」

マスターも同じ考え。

「必ず官邸に乗り込むな、きっと」

由紀は、少し反発。

「だってまた被害者が出るって、必ず、それからだと遅い」

久我道彦も、首を傾げる。

「他の国で、こんな危険な大会を長期間やるって聞いたことがありません」

華蓮は、積極的に問題提起をしたいようす。

「とにかく、このまま無策で、被害者が発生するのが耐えられません」

自治会長

「なかなか決まってしまった大会を途中で変えるのも、難しいでしょうけれど」

「生徒たちも、その日をめざして練習していますからね」

マスター

「そうなると、被害を最小限に抑える方策しかないね、現時点では」


・・・・・・・・

結局、明確な結論はでなかった。


それでも、マスターは「街のうわさ話」として、大旦那には連絡をした。

大旦那は、途中から「これは史の話」と気づいたけれど、懸命に怒りを抑えた。

マスターが史の実名を出さないのには、何かの理由があると理解したらしい。


大旦那

「おおよそ、わかった」

「とにかく熱中症の人は、回復を先に」

「俺からは、官邸に、それとなく・・・いや厳しめに伝えておく」

「ただ、大騒ぎはしないよ」


マスターは、大旦那の反応で、ホッとした。

「助かります」

素直に礼を言うと、電話が奥様に変わった。


その奥様はいきなり涙声だった。

奥様も、途中から気がついていたらしい。

「ねえ、史君でしょ?ほんと、可哀そうに・・・」

「あんな可愛くて優しい子が、苦しんでいるなんて」

その後は、泣いてしまって言葉にならない。



翌朝、史はようやく起きることができた。

シャワーとシャンプーを朝6時に済ませ、食卓についた。

美智子

「梅干しのお粥にしたよ」

由紀

「無理しないで、ゆっくり食べて」

「みんな心配して来てくれたよ」


お粥をすする史に、いろんな声がかけられる。

「うん、お礼しないと」

ただ、喉も痛いらしい、ガラガラ声になっている。

その史が、晃に尋ねた。

「ねえ、父さん、まさか大旦那に言ってないでしょ?大事になるから困る」


晃は首を横に振る。

「いや、知らないと思うよ」

由紀は、否定も肯定もしない。

「そんな心配しないで、早く回復しなさい」

美智子は、落ちついている。

「大丈夫、みんなを信じなさい」


史は、母美智子の応えで、落ちついた。

そして、食後は、またひたすら、寝続けることになった。







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